前編で、「日本では、あと十数年もすれば“電力が余る時代”が到来する」という結論に至りました。ではなぜ、政府はあれほどまでに原子力発電所を再稼働させたがっているのでしょうか。その真の意図を読み解くキーワードは「オイルショック」であると、考えられます。
あと十数年もすれば、「電力足りる/足りない」の議論は終えんを迎え、「電力が余る」時代が到来する ―― 前編では、週末研究員(休日に自宅で、会社業務と無関係な、好きなテーマの研究をする人)である私が、公開されているデータと電卓とPCとだけを使って、この結論にたどり着くまでの経緯を説明しました(これが、正しいか否かは十数年後に明らかになります)。
しかし、同時に、週末研究員の私でも気が付くようなことに、内閣府や省庁の官僚の方や経済界のエライ人たちが、気が付いていないはずがないとも思ってしまいました。もし彼らがそのことに気が付いていれば、原発を再稼働させるために「電力が足りない」を理由とすることができなくなることも当然に知っている、と思うのです。
あるいは、江端の仮説や少子化のシミュレーション結果が、完全に的を外していて、将来も電力使用量は、今と同じように増えていくという根拠を持っているのかもしれません。
私の出した結論の是非がどうあれ、政府や経済界が、これほどまでに、原発を再稼働させたい理由は、やっぱりよく分かりません。
私は、原子炉建屋が水素爆発で吹き飛んだ映像を見たときの、あの恐怖を忘れることができません(参考記事)。そして今なお、原発事故は、今なお多くの人を苦しめ続けています。
誰がどう考えたって、「原発なんて、もうやーめた! いち抜けた!!」と逃げ出すのが自然だと思うのです。
―― もしかして、過去に、原発事故以上の何かもっと怖いことがあったのかな?
そのように考えないと筋が通らないと思いました。
それにしても、あの原発事故の恐怖を超える恐怖 ―― そんなもの、あるかな? ―― と思いつつ、私はいろいろな本を読み漁ってみました。そして、1つの可能性を見つけました。
「オイルショック」です。
日本という国土に、絶望的に資源がないのはご存じの通りです。
食料自給率は、カロリーベースで39%ですし、自国で確保できる1次エネルギーの比率は、今や6%です。
日本という国は、食料についても、エネルギーについても、外国に依存することが運命的に決まっている国です。だからこそ、アジア各国が今なお本気で日本を恐れているのです。
―― あの国、キレたら、何やらかすか分からん。
80年ちょっと前くらい、わが国が実際にキレて、アジアで暴れて、今なお面倒な外交問題が残っているのはご存じの通りです。
それはさておき。
「オイルショック」とは、戦後、わが国が「持たざる国」であることを、腹の底から思い知らされた歴史的事件です。
ここではパレスチナ問題についての説明は割愛しますが、簡単に言うと、イスラエルと、エジプト、シリア軍が戦争を開始することに端を発します(1973年)。
アラブ諸国は、世界各国に原油を供給し続けており、日本は、その供給国の1つでした。その時、日本がアラブ諸国に依存していた石油の量は全体の77%です。さらに一次エネルギーの75%を石油に頼っていました。
4回目の中東戦争の時、アラブ諸国は、この原油を武器にすることを思い付きました。イスラエルを支持しているアメリカ、オランダなどに対して、「もう原油は売ってやらん」と言い出し、産油国が、全世界に対して原油価額の引き上げや輸出禁止措置に踏み切ったのです。
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