TSMCが16nmプロセスを適用したFinFETのリスク生産を開始した。開発スケジュールは予定よりも早く進んでいるようだ。今後は、AppleやQualcommなどが、新しい世代のFinFETの製造を、TSMCとSamsung Electronicsのどちらにどの程度発注していくのかが注目される。
TSMCは2014年11月12日、同社の16nm FinFET Plus(16FF+)プロセス適用チップが、リスク生産の段階に入ったと発表した。
台湾のFubon Securitiesでアナリストを務めるCarlos Peng氏によると、今回のTSMCの発表から、同社にとって初となる3次元チップの開発スケジュールが、予定より早く進んでいることが分かるという。3次元チップは、さらなる小型化と堅牢化の実現を目指す新世代モバイルデバイスにおいて、中核を成す存在となる見込みだ。
Peng氏は、「TSMCが、2014年第1四半期の20nmプロセスから、新世代の16FF+プロセス技術への移行に要した期間は、わずか3.5四半期程度だった。業界全体の平均的な開発期間と比べると、いく分か短いといえる」と述べている。
Peng氏によると、TSMCは2014年第4四半期中に、16FF+プロセス適用チップを少量出荷する予定だという。同社が、重要なマイルストーンとなる今回の発表を行ったことで、その顧客企業であるAvago TechnologiesやFreescale Semiconductor、LG Electronics、MediaTek、NVIDIA、ルネサス エレクトロニクス、Xilinxなどからも、同プロセス技術に対する支持を得ていることが分かる。
Peng氏は、「これらの顧客企業の発注先は、TSMCだけだ。こうしたことからも、TSMCがFinFETの分野において、確実にSamsung Electronicsのはるか先を行っていることが分かる」と述べている。
TSMCの共同CEOであるMark Liu氏は、プレスリリースで、「当社は、20nmプロセス適用SoCの量産に成功したことにより、16FF/16FF+プロセス開発への道を切り開くことができた。極めて競争力の高い技術を迅速に提供することで、顧客企業の製品価値を最大化することが可能になった。こうした新世代のプロセス技術を顧客企業に提供することによって、性能とコストとの適正なバランスを実現し、各社が設計要件や開発期間などの目標を達成できるようサポートすることができる」と述べている。
また、クレディスイス銀行(Credit Suisse)でアナリストを務めるRandy Abrams氏は、TSMCのFinFETプロセス開発スケジュールに対して、強い信頼感を示している。
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