Xiaomiは、自社を“民生機器(CE)ベンダー”と分類するのを極端に避けている。代わりに自らを“モバイルインターネット企業”と称する。Lin氏はEE Timesに「Jun Lei氏(雷軍氏、同社の設立者でありCEO)と私はモバイルインターネットの重要性を常に理解してきた」と語った。
Lin氏は「書籍は今や、書店までバイクで届けられる代わりにオンラインで売られている」と説明した。eコマースの利便性は疑う余地なく証明されている。
さらにLin氏は「当社のような新興企業にとって、eコマースはビジネスを行う唯一の方法だ。インターネットでのマーケティングに注力することで、あらゆる諸経費を削減でき、消費者にコスト面でメリットをもたらすことができる」と述べた。Xiaomiは、ハードウェアを売ることよりもサービスを提供することで利益を得ることを使命と考えていて、その点ではGoogleに非常に良く似ている。
Xiaomiの成功はよく、派手な売り込みとブランドのプロモーションにしっかりと焦点を当てたことによるものと分析される。また、同社が設計、開発、製造工程の全てを外注することも成功の要因といわれる。
だが、これは真実ではない。
XiaomiはODMに頼ってはいない。同社のエンジニアリングチームは深い技術知識を備えていて、スマートフォンに適したプリント基板、液晶ディスプレイ、パワーマネジメントIC、モデム、アプリケーションプロセッサ、イメージセンサー、カメラモジュールといった部品を選ぶ能力がある。
だが、高性能なスマートフォンを開発することと、無名だったXiaomiというブランドに高性能部品を売ってくれる“トップサプライヤ”を探すことは全く別物だ。Xiaomiが設計したスマートフォンの組み立て/量産が可能なメーカーを探すとなると、ハードルはさらに上がった。
Lin氏は、Lei氏や部下と共に、高性能スマートフォン向けの最良の部品を求めてあらゆるところに出向き、主要なベンダーを訪問した。Lin氏によると、液晶ディスプレイのサプライヤを探す時には、シャープ、東芝、AU Optronics、Innoluxを訪ね回ったという。
ところが、訪問したサプライヤのうち8割から部品の供給を断られてしまう。Foxconn Technology Groupには、はっきりと“NO”と言われたが、「生産能力がない」と答えたサプライヤもいた。通常より5割も高い見積もりを出してきた企業もあったというが、「それは実質的に“NO”と言われたようなものだった」とLin氏は振り返る。
ディスプレイでは、最終的な契約を前にシャープともめた事もあった。Lin氏は「後日シャープの担当者から聞いた話では、日本の代理店(三井)の重役がわれわれに同行したので“YES”と言ったらしい」と述べた。
だが、最も大きいハードルは、Xiaomiのスマートフォンを組み立てられる企業を探すことだった。Lin氏はある企業とのミーティングの前に同僚と「彼らに“NO”と言われたらもう終わりだ」と話したことを覚えているという。
新興企業はよく練り上げられた計画があるからといって成功するわけではない。幸運によるところも大きいわけだが、Xiaomiの場合、それは台湾のInventec Appliances(インベンテック・アプライアンシズ)との出会いだった。
Inventec Appliancesは自社のミッドレンジの携帯電話を生産しているが、その傍らで他社に電子機器の製造サービスも提供している。
Xiaomiのスマートフォンは、10層のプリント基板を小さなスペースに搭載しなくてはならない。これを実行するためには、Inventec Appliancesは新しい装置に巨額の投資をする必要があった。それにもかかわらず、同社はXiaomiと契約したのである。
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