ムーアの法則は本当に死んだのでしょうか?
ひと言でいえば、まだ死んではいません(その判別段階にある)。しかし次のデータは、「死期が迫っている」といえる理由を示しています。
AMDのLisa Su博士は、プロセスノードが28 nm未満になると1トランジスタのコストが上昇することを示しました――これは半導体業界で初めてのことです。同博士は2013年に開催された国際学会「ISSCC 2013」の基調講演で発表しました。
なぜそうなるのか? 28 nm未満ではトランジスタがさらに小さくなり、ウェハのコストがウェハ1枚当たりのトランジスタの数を増やすメリットをしのぐからです、とMentor GraphicsのCEOであるWally Rhines博士は2014年4月に開催されたElectronic Design Process Symposium(EDPS)での基調講演で説明しました。コストが上昇するのは、より微細なトランジスタを作るためにメーカーが2倍または3倍のパターン形成(ダブルパターニング、トリプルパターニング)を行わなくてはならないからです。これがコストの上昇につながるのは、1つには商用利用できる次世代のリソグラフィツールの開発が遅れていることが原因です。また、FinFETの製作では必要となるマスクと加工の回数が増えることもその一因です。
IntelのAndy Grove氏とハーバード・ビジネス・スクールのClayton Christensen氏は、1998年に「Strategic Infection Point(戦略的転換点)」という言葉を生み出しました。Grove氏によれば、戦略的転換点とは、「競争環境で大きな変化が起きたときに企業に起こること」をいいます。CMOS技術への回帰がなくなる時が、SoC設計チームの創造力と価値を解き放つ転換点となるかもしれません。
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