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SoC設計者が“ポスト・ムーアの法則時代”を生き抜く術「ムーアの法則」はもう何もおごってくれない!(3/4 ページ)

» 2014年12月24日 10時10分 公開

設計イノベーションの新たな機会

 ムーアの法則時代が過ぎたあとにやってくるのは、ハードウェア設計チームの重要性を高めるイノベーションの機会です。最も大きな向上を見込める4つの領域を以下に示します。

  1. ハードウェアのリファクタリング
  2. 処理効率
  3. オンチップ通信の最適化
  4. 設計期間の短縮

ハードウェアのリファクタリング

 現在のプロセスノードで性能、電力、面積の向上を図るために既存の設計を見直しているハードウェア設計チームが最も有利です。既存の製品アーキテクチャRTLをリファクタリングすることで、機能を変更せずに性能の向上、消費電力の低減、コストの削減を実現できます。

 このプロセスには、新しいIP群の将来的な統合を見据えたオンチップ/オフチップインタフェースの標準化と拡張も含まれます。これにより設計者はプラットフォーム方式でSoCを素早く再構成し、同じアーキテクチャでさまざまな市場の要求に応えることができるのです。

 このプロセスの要となるのは、SoC内に残されているクラフト、つまり無駄なものを見つけ出し、取り除く作業です。例えば、あなたのスマートフォンに入っているトランジスタの1部は、1990年代に書かれたRTLから合成されたものです。こうした古い設計をリファクタリングすれば、主流の半導体製造プロセスを用いてパフォーマンスの向上と消費電力の低減を図ることができます。

非対称マルチプロセッシング(AMP)

 処理効率も主流の半導体ノードで改善できる可能性があります。今日の汎用CPUは、単に対称マルチプロセッシングアーキテクチャで周波数を上げることによってできるだけ多くの処理をこなしています。しかしバッテリー寿命と電力バジェットはフィーチャの増加に追い付けるほどすぐに増やせるものではありません。設計者が「処理に最適なプロセッシングコア」を使い、同じトランジスタでパフォーマンスの向上と消費電力の低減を実現できるようにするためには、SoCアーキテクチャを変更すことが必要です。このことが非対称マルチプロセッシングアーキテクチャ(AMP)への移行を促すでしょう。

 AMPへの移行にはいくつかのメリットがあるものの、長きにわたって議論されてきたこのアプローチには多くの賛否両論があります。しかし今では移行へのプレッシャーが高まり、ハードルは下がる一方です。

 2012年、Arteris はAMD、ARM、Imagination、 MediaTek、 Qualcomm、 Samsung、Texas Instrumentsと共に、多様な高水準プログラミング言語をサポートするCPU、GPU、その他デバイスを使用した並列計算のインタフェースを策定するためのHSA(Heterogeneous System Architecture)Foundationを設立しました。

 この取り組みは、ハードウェアとソフトウェアの規格を策定することでAMPアーキテクチャの採用を促し、コスト面からも経済的実現性のあるものにすることを目的としています。業界にとってはなじみのあるトランジスタ技術でさらなる性能の向上と消費電力の低減を実現できるという利点があるのです。

オンチップ通信

 向上が見込める3つ目の領域は、オンチップ通信の効率性です。現在に至るまで、SoC設計者たちは計算処理IPとSoCの体裁に重点を置いてきました。しかし、ダイに追加される機能が増えるにつれ、システム全体のパフォーマンスの制約要因がオンチップファブリックに移ってきました。従って今後は、SoC設計内でIPブロックがどのように互いに通信するかということに重点が置かれなくてはなりません。機能をどうつなげるかということが、機能そのものと同じくらいに重要になってくるでしょう。

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