今回は、大容量化と高速化が進む半導体メモリに焦点を当てる。メモリ市場の二大勢力となっているDRAMとNANDフラッシュメモリについての講演が多い。15nmプロセスを採用したNANDフラッシュメモリや、車載マイコン向けフラッシュメモリ技術、次世代のDRAMインタフェースなどに関する発表がある。
半導体メモリの性能を決めるのは、記憶容量やアクセス時間、データ転送速度、消費電力などである。特に重要なのは記憶容量とデータ転送速度で、大容量化と高速化がメモリ開発の二大トレンドであることからも、いかに大切かが分かる。
もっとも、市場ではコスト、すなわち販売価格が何よりも重視される。半導体メモリの製造コストはおおむねシリコンダイ面積によって決まるので、単位面積当たりの記憶容量が高い、言い換えると記憶容量当たりの価格が低いメモリが市場では主役となる。
記憶容量当たりの価格が低いことでは、NANDフラッシュメモリが最も優れている。そして記憶容量そのものでも、最大容量を更新し続けてきたのがNANDフラッシュメモリだ。ただし、NANDフラッシュメモリには、書き換えが遅い、書き換え回数に制限がある、という大きな弱点が存在する。
書き換えが速く、書き換え回数に制限がなく、記憶容量当たりの価格がNANDフラッシュメモリに次ぐ低さという優れた半導体メモリが、DRAMである。かつてのDRAMは大容量化が重視されてきたが、最近では圧倒的に高速化が重視されている。大容量化の開発努力はもっぱら、NANDフラッシュメモリでなされている。
結果として半導体メモリ市場で主役を占めているのは、DRAMとNANDフラッシュメモリの二大勢力となっている。したがってISSCCで発表される研究開発の成果も、半導体メモリ分野ではDRAMとNANDフラッシュメモリに関するものが多い。
DRAMとNANDフラッシュメモリを除くと、半導体メモリの技術者コミュニティで活発に研究が進められているのが、オンチップキャッシュと次世代不揮発性メモリである。オンチップキャッシュは通常、SRAM技術を利用する。SRAM技術はロジック技術とプロセスの互換性が高く、ロジックの微細化が、SRAM技術の高密度化と高速化を進めてきた。
次世代不揮発性メモリには3つの有力技術が存在する。磁気メモリ、相変化メモリ、抵抗変化メモリである。開発にはおおよそ3つの方向がある。1つは、NANDフラッシュメモリを超える巨大容量メモリである。もう1つは、DRAMとNANDフラッシュメモリの中間に位置する、高速な不揮発性メモリである。最後は、低消費電力のオンチップキャッシュである。これらの開発動向を一望できるのが、ISSCCだと言える。
ISSCC2015でメモリに関する講演セッションは2つある。1つはセッション7(サブテーマは「不揮発性メモリソリューション」、2015年2月24日火曜日午前8時30分開始予定)で、NANDフラッシュメモリの開発成果が主に披露される。もう1つはセッション17(サブテーマは「埋め込みメモリとDRAM I/O」、2月25日水曜日午前8時30分開始予定)で、埋め込みSRAM技術と埋め込みDRAM技術、オンチップキャッシュ用磁気メモリ技術、次世代の低消費電力DRAMインタフェース技術が登場する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.