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地球温暖化の根拠に迫る世界を「数字」で回してみよう(11) 環境問題(1/5 ページ)

今回は、二酸化炭素(CO2)がどのように地球を暖めるのか、そして、「2100年には、最悪で平均気温が4.8℃上昇する」という説に根拠があるのかを検証したいと思います。地球温暖化の仕組みは、太陽と地球をそれぞれ「ラジオ放送局」と「ラジオ受信機」と考えると分かりやすくなります。

» 2015年01月21日 08時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

 後輩:「江端さん。そんな本、何冊読んだって無駄ですってば」

 会社や図書館から借りまくった、いわゆる「やさしい環境問題」「すぐ分かる地球温暖化問題」などの題名のついた本の山の中でグッタリしていた私に、大学で地球科学を専攻していた研究所の後輩が、あきれた風に言いました。

 地球温暖化のニュースで、必ず登場する「国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovermental Panel on Climate Change)、略称IPCC」が主張する、

2100年には、最悪で平均気温が4.8℃上昇し、水位は82cm上昇する

の数字の根拠が、どこにも解説されていないのです。

 日本の著名なジャーナリストの本や、海外でベストセラーになったと言われる本にも手を出してみましたが、数値一つ出さずに「これは大変だ。人類は、なんとかしなければ」という論調が繰り返されているだけです。CO2が大気中に0.04%しか存在しないことすら、記載がありませんでした(前回の記事を参照)。

 一方、IPCCの発表の内容に反対している人のコラムの多くは、「そんなはずはない」と繰り返しているか、仮にそうでなくても、小学6年生の私の娘でも指摘できるような間違いをしていることがあるし(例えば、放射と対流の区別ができていない)、そして説明できないことになると、「陰謀」「利権」「金」という言葉で逃げてしまいます。

 要するに、参考になる資料が全然ないのです。

江端:「なんでこうなるんだ〜〜! 私は、温室効果の、ひと通り筋の通った理屈と、その数値モデルと、数字が知りたいだけなのに〜〜!!」
後輩:「いやいや、江端さん。IPCCパネルは、一応、論文やら計算を公開していますよ。きちんとレビューを試みない江端さんが悪い」
江端:「あんな膨大な英語の論文や、スーパーコンピュータの計算なんぞに、手を出せるか! そもそも、いったい、世界で何人の人間が、あの内容を理解できるというのだ!!」
後輩:「じゃ、仕方がないですね。それなら、江端さんが自分で勉強を始めて、自分で一通りのストーリーを立てて、自分で納得するしかないでしょう」

と言って、後輩は、1冊の本「大気化学入門」(ダニエル ジェイコブ 著、近藤豊 訳)を置いていきました。

 そして、その本、今、私の赤ペンの書き込みで真っ赤になっています。


 こんにちは、江端智一です。

 前回は地球温暖化の主原因とされているCO2について、身近な生活の例を使ってアプローチしてみました。

 今回は、大気中に0.04%しか存在しないCO2が、どうやって地球を温めているのかを、いろいろな本や人の助けを借りながら、その内容をお話してみたいと思います。

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