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» 2015年02月09日 08時00分 公開

石油は本当に枯渇するのか?世界を「数字」で回してみよう(12) 環境問題(2/5 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

原油はどうやって出来たのか

 そもそも私は「原油ってどうやって出来たのだろう」と言うことを知らなかったので、今回改めて調べてみたのですが ―― そして、本当に驚いたのですが ―― 現在にあっても、まだ「よく分かっていない」のです。

 これはすごいことです。原子力エネルギーの発生メカニズムは完全に分かっているのに、私たち人類は、ずうずうしくも、製造メカニズムすらはっきりしていない原油を、毎日バカスカ使っているのです。「燃えるなら、それでいいじゃん」というノリで。

 さて、現在、原油の発生起源については3説あります。

概要 その他
(1)生物由来説
(有機成因論)
生物の死骸を原料として原油になる 現在の学説の主流
(2)無機成因論 地下の炭化水素が変質して
原油やメタンガスに変わる
原油は無限に生成され続けることになる
(3)原油分解菌説 原油分解菌という細菌が原油を生成する 実験室レベルで確認
出典:Wikipedia「石油」、その他

 今回は、学説の主流である、(1)生物由来説(有機成因論)を軸に考えることとします。

 「生物由来説」では、以下のプロセスで原油が作られることになります。

【Step.1】海や湖にいた植物性プランクトンや藻類、それらを餌に育った生物などの死骸が、砂や泥で覆われる
【Step.2】海底に堆積して岩石となる途上で、有機物がかさなりあったケロジェンと呼ばれる泥岩になる
【Step.3】地震などによって海底が地上に隆起し、長い時間にわたってバクテリアや地熱の作用を受け、水とガスと油(原油系炭化水素[原油])に変化する
【Step.4】このようにしてできた原油は、地下の圧力で上へ上へと移動し、すき間のない岩石の下に溜って、分離、蓄積する

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 ポイントは、「動植物の死骸が完全に分解する前に、酸素のない環境に埋没させる」というところです。

 つまり、地表のように十分な酸素(O2)があれば、生物の死骸はすぐに二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分解されてしまい、炭化水素(CnHm)として残ることはないと考えられているからです。

 イメージとしては、

[A]海底土砂による海洋生物(死骸)の即時超高圧密封パック
[B]適度な地熱とバクテリア
[C]数千万年の年月
[D]地震などによる油田の地上への隆起

という、「ラッキー4点セット」で人類は原油をゲットできるわけです。特に[D]については、現在の原油産出国は「スーパーラッキーだった」といえます。

原油に「昇格」できるかもしれない

 その時、ふと ―― 「海洋生物の死骸」から原油が生成されるのであれば、「私の死体」だって ―― と、思いつきました。

 私の死体を火葬もせず、地上で腐敗させることもなく、海中の土砂深くに沈めて数千年万年程放置し、上記[A]〜[D]の「ラッキー4点セット」に恵まれたら、私の死体だって原油に「昇格」できるかもしれない、と考えました。

 そこで、私の死体からどれ位の原油ができるか試算してみました。

 人間の体の構成物質(有機物のみ)は、おおむねこんな感じになっています。

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 一方、原油の構成は、質量パーセントで、炭素:85%、水素:13%、硫黄:5%以下、窒素:0.4%以下、酸素:0.5%です。

 理想的な条件が満たされたと仮定した場合、私の死体から生成される原油は14.1kg(=12.0kg÷85%)の重量になり、容量にすると16.8リットル程度になります(原油の密度は0.84)。

 つまり、私の死体を、運よくドロドロで真っ黒の原油に変化させることに成功した場合でも、その容積は灯油缶1缶にも満たず、資源としての価格は748円にしかならないのです(2014年12月の原油の取引価格1バレル(159リットル)、60米ドルとして算出)。

 100g当たり1.2円くらいですね。スーパーマーケットでの、特売の鶏肉や豚肉の販売価格の1/100くらいです(もっとも、私の肉を「食用」でコスト換算すれば、もう少し価値があるのかもしれませんが、今回、人肉を取引するマーケットは見つけられませんでした)。

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