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» 2015年02月16日 10時00分 公開

会社の成長に“イノベーション”は不要? 本物の企業価値とは勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(1)(2/4 ページ)

[世古雅人,EE Times Japan]

“イノベーション”が少なくても成長し続ける自動車企業

 ここでちょっと考えてみたいのが、「イノベーション」だ。以下では、技術革新的な意味合いでイノベーションという単語を用いている。

 実は、過去20年を通じて、日本の自動車企業は大きな技術革新を頻繁に起こしているわけではない。筆者が思い浮かべる自動車に関する大きなイノベーションの軸は2つあり、1つは「エコ・環境の軸」としてハイブリッドカーやEV(電気自動車)である(他には燃料電池車、水素自動車など)。もう1つは、「安全の軸」としてITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)だ。カーナビのVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)、ETC(Electronic Toll Collection System:電子料金収受システム)はおなじみだろう。ここ数年は、ASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)分野の普及が著しく、衝突を軽減する自動ブレーキや、車線から自車が逸脱したら注意を喚起するシステムなどは一部の高級車だけでなく、軽自動車にすら搭載される時代となった。

 あくまでも筆者の独断だけでは心もとないので、知人でもある「車を愛すコンサルタント」こと、関伸一氏(関モノづくり研究所代表)に聞いてみた。MONOistに学生フォーミュラのリポートを書いているが、同氏に自動車業界のイノベーションとは何でしょう? と聞いたところ、すかさず、「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)でしょう。『BMW i3』で量産車EVで用いられることはエポックメイキングだ!(参照記事はこちら)」と答えてくれた。帝人、東レなど日本の素材メーカーが世界シェアのほぼ100%を占めるCFRPは、加工、量産が困難とされていたが、量産車にも使えるほど費用対効果が高まった結果ともいえる。

 しかし、「エコ・環境」「安全」にしても、間接的にはITの力を借りながら電子分野(センサー、バッテリー、制御方式など)、化学分野(燃料電池、触媒など)、素材・材料分野(CFRPなど)の存在があったからこそ、自動車企業技術革新を成し得たと言えなくもない。とはいえ、アジアの国々に追い付かれることなく、高い国際競争力を長期間にわたり誇示していることは素晴らしい。

“イノベーション”が多くても低迷する電機企業

 同じように電機業界を見てみると、イノベーションと言われるものがとても多いことに気付く。図2は、「日本企業初」で登場した製品のシェアの1987年から2007年までの推移である。液晶パネル、DVD、電池(特にリチウムイオン)、カーナビなどは世界市場でほぼ100%のシェアを日本企業が有していたにもかかわらず、わずか数年で激減していることが分かる。

photo 図2 失われる日本企業のシェア(クリックで拡大)

 少なくとも、これらの製品が世の中に出た時の日本の各電機メーカーは、ダントツで1位だった。技術力や知的財産で勝っていたはずの日本の製造企業が、なぜ、たかだか数年でダメになったのか。大量普及のステージになると市場撤退を余儀なくされ、韓国、中国を筆頭にするメーカーの後じんを拝さなければならなかったのか? 製品設計の段階から考えてみたいというものが本連載のキッカケである。

 この答えになることは、おいおい本連載にて皆さんにお伝えしていく。本シリーズのテーマは「製品アーキテクチャ」でもあるので、開発や設計に携わる皆さんにも大きく関係すると考えている。

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