米国の大学が、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、半導体チップ上に人工の心臓を作ることに成功したという。他の人工臓器をチップ上に形成し、マイクロ流路で接続すれば、薬剤が各臓器に与える影響などを研究できる可能性がある。
米University of California at Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)の生体工学者グループは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って、“鼓動を打つ心臓”を半導体チップ上に作成することに成功した。
同研究グループは今後、チップ上で人間のあらゆる臓器を作成し、それぞれをマイクロ流体で接続することによって、ウエハー上で完全な人間のシステムを実現することを目指すという。
University of California at Berkeleyの教授であるKevin Healy氏は、EE Timesの取材に応じ、「(iPS細胞の開発で2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した)山中伸弥教授が発見した手法と同じく、皮膚の幹細胞からあらゆる種類のヒト組織を取り出すための方法を開発することに成功した。まずは薬剤スクリーニングに適用したいと考えている。そうなれば、(マウスなどの)動物を使わずに済むようになるかもしれないからだ。患者の幹細胞を使ってチップ上に臓器を形成できるということは、遺伝的疾患の治療にも役立つ可能性がある」と述べている。
また、マイクロ流路を使って各臓器を接続し、血液や生体液を運ぶことから、ウエハー上に人間のシステムを構築することによって、さまざまな臓器間における薬物の相互作用についても研究できるようになると考えられる。
Healy氏は、「例えば、心臓疾患を治療するための薬剤が、肝臓では毒素となる可能性もある。このようなことは、実際に患者に投与してしまう前に発見すべきだ」と述べる。
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