同氏は、こうしたシステムを利用すれば生体ロボットの作成が可能になるのではないかとの質問に対し、「その件については、プロジェクトの目標に入っていない。今回のプロジェクトは、米国立衛生研究所(National Institutes of Health)が各機関との協業により、薬剤スクリーニングを目的とした3次元ヒト組織チップの開発を目指すイニシアチブ『Tissue Chip for Drug Screening Initiative』の一環として、資金を提供しているためだ」と述べている。
ただ、チップ上でマイクロ流路を用いて各臓器を接続し、相互作用させているという点から、こうした技術が将来的に、ロボットなどの創造物を作成する上での基礎となる可能性もある。
Healy氏は、「それを実現するには、センサーやアクチュエータが必要だ。センサーについては容易に対応できるだろう。アクチュエータに関しては、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が現在、アクチュエータとしての機能を備える人工筋肉の開発に取り組んでいるところだ」と述べる。
同氏と研究チームはこれまでのところ、本物の心筋細胞を含む長さ約1インチ(2.5cm)の“人工心臓用ケース”をウエハー上に作成している。このケースに心臓の細胞を入れてから約24時間で、1分間に55〜80回の速さで自発的に鼓動を打ち始め、マイクロ流路で血液を送れるようになった。また、鼓動の回数を増減することが実証されている薬剤に対しても、正常に反応するという。
Healy氏の研究グループの博士課程修了研究者であり、カリフォルニア再生医療機構(CIRM)のフェローでもあるAnurag Mathur氏は、「マイクロ流路は今のところ、栄養素を運んでいるだけだが、いずれは老廃物も運べるようになるかもしれない」と述べる。心臓の細胞は現在まで、数週間生き続けているという。
さまざまな種類の“チップ上の臓器”をマイクロ流路で相互接続し、血液と生体液を流すことも、将来的には可能になるかもしれない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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