東京大学 教授の古澤明氏らの研究チームは2015年3月、約100年前にアインシュタインが提唱した「量子(光子)の非局所性」を世界で初めて厳密に検証したと発表した。検証に用いた技術は、「新方式の超高速量子暗号や超高効率量子コンピュータへの応用が可能」(古澤氏)とする。
東京大学 教授の古澤明氏らの研究チームは2015年3月24日、約100年前にアインシュタインが提唱した「量子(光子)の非局所性」を世界で初めて厳密に検証したと発表した。検証に用いた技術は、「新方式の超高速量子暗号や超高効率量子コンピュータへの応用が可能」(古澤氏)とする。なお、この研究成果は、英国の科学雑誌「Nature Communications」(2015年3月24日[現地時間]オンライン版)に掲載された。
量子の非局所性とは、1909年に物理学者のアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)が、量子力学の不可解な例として提唱したものだ。
量子である光子が小さな穴(ピンホール)を通過すると回折して放射状に広がる。これを半球面上のスクリーン(センサー)で検出すると、スクリーン上の1点でしか光子は観測されない。この現象に対して、アインシュタインは「ピンホールで回折した光子は空間的に均等に広がるので、スクリーン上のどこにでも等しい確率で現れるはず。しかし、1カ所で検出されたら他で検出されないので、ある場所で観測された影響が他の離れた場所に及ぶような奇妙な相互作用が存在するのではないか」と主張。この奇妙な相互作用を“spooky action at a distance”(離れた場所の間で起こる奇妙な相互作用、超常的遠隔相互作用)と呼び、現在では「量子の非局所性」と呼ばれている。
この量子の非局所性は、多くの人には理解しがたい現象であるため、より厳密な検証が求められるが、十分な説得力を持つ検証ができず、「物理学の100年論争」とも呼ばれる非局所性の存在/解釈を巡る論争が行われてきた。
十分な説得力を持つ検証が難しい要因としては、光子を検出する効率が悪いなどの理由から「測定の抜け穴」と呼ばれる制約が生じることや、さらに光子の有無しか観測できず、「観測された影響が、他の離れた場所に及ぶ作用」を厳密に検証できなかったことが挙げられる。
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