そして、離れた2つの光路の先(仮に、A地点とB地点)の両側で、光子の粒子性(光子の有無)を観測する代わりに、光子の電磁波としての測定(=ホモダイン測定)を実施した。その結果、部分反射ミラーの片側(透過光/A地点)のホモダイン測定の観測属性(位相)を変更すると、観測属性と得られた結果(振幅の符号)に応じて、もう片側(反射光/B地点)の量子状態に変化が生じることを確認したという。
具体的には、A地点で、光子に特定のタイミング(位相)で光子の有無を観測すると、B地点では、A地点の逆位相の波を検出。さらにA地点で別の位相の光子の有無を観測すると、それに従い、B地点でも位相が変化した様子を検出し、「離れた場所の観測が影響すること」を確認した。
なお、同研究チームでは、非局所性の存在を示す十分な根拠を得るために、電磁波の6 つの異なる属性でその効果を検証。その上で、EPR steering不等式の破れを検証し「光子の非局所性の厳密な検証に成功した。物理学の100年論争に、理論的には決着が着いた」(古澤氏)とする。
古澤氏らは以前から、粒子としての性格が強い量子である光子の“波”、“電磁波”としての側面に着目し、完全な量子テレポーテーション*1)や超大規模量子もつれの作成*2)など、量子コンピュータ実現に向けた開発成果を挙げてきた。
*1)関連記事:完全な量子テレポーテーションに成功
*2)関連記事:量子コンピュータ実現に向け大きな前進――超大規模量子もつれの作成に成功
今回の量子(光子)の非局所性の厳密な検証実験の成功について、古澤氏は「長年開発してきた要素技術の集大成であり、新方式の量子コンピュータの実現に向けても応用できる成果」とした。
新方式の量子コンピュータについて古澤氏は「古典コンピュータに例えるなら、“アナログコンピュータ”と“デジタルコンピュータ”の双方の性質を利用した“アナデジコンピュータ”のようなもの。量子の粒子性は、デジタルのビット情報であり、堅牢な情報だ。一方で、量子の波は、アナログのような存在で、処理はアナログで行った方が効率が高い。量子の粒子性と波の性質の両方を使うことで、効率の良い量子コンピュータが実現できる」と語った。
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