今回は、携帯機器などの用途に求められる消費電力の点から、CPUの性能を見てみよう。まず覚えておきたいのは、ゲート長ごとに性能と消費電力のトレードオフが存在するということだ。
CPUには、高い性能と低い消費電力が常に求められる。用途を問わず、高性能と低消費電力をプロセッサ製品やSoC(System on a Chip)製品がアピールすることは変わらない。
といっても、消費電力の適切な値は1つではない。用途により、許容できる最大の消費電力は異なる。要求する最低限度の処理性能も違う。
消費電力の許容値が最も低いのは、バッテリで動作する小型の携帯機器だろう。携帯型ゲーム機や腕バンド型端末などが、この領域に属する。これらの機器がCPUに求める性能は、それほど高くない。バッテリで動作する小型の機器でも、スマートフォン用のCPUに要求される性能はずっと高い。にも関わらず、消費電力の許容値はかなり低い。要求仕様の非常に厳しい用途である。
消費電力の許容値がやや高くなる用途は、メディアタブレットに代表される。スマートフォンに比べると大きな容量のバッテリを積めるので、消費電力に対する要求はスマートフォンよりも緩い。
据え置き型機器や携帯電話システムの基地局用機器、サーバ機器などのCPUは、当然ながら、消費電力の許容値ははるかに大きい。ただし、より高い性能を求めつつ、消費電力を従来よりも下げることが要求されている。
本シリーズの第6回で説明したように、スタンダードセルのレイアウトは「ゲート長」と「しきい電圧」によって違ってくる。「ゲート長」は半導体製造技術の世代を現す。同じ世代でも、性能と消費電力のトレードオフで決まる適切と思われるポイント(設計の候補となる地点)には幅がある。
性能(動作周波数)とリーク電力(待機時消費電力)の組み合わせで決まる設計の候補地点は、半導体製造技術の世代(ゲート長)ごとに、帯状の領域となって表現される。帯状の領域は、実現可能なCPUの範囲であり、設計の可能性を示す。帯状の領域は半導体の世代ごとに違う。
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