米スタンフォード大学が、1秒間で再充電できる、フレキシブルなアルミニウム電池を試作した。正極(アノード)にアルミニウム箔、負極(カソード)にグラファイトフォーム(黒鉛泡)、電解液に液体塩を用いている。7500回充放電しても電池容量が著しく低下することはないという。
エネルギー貯蔵技術における究極の目標は、安価かつ豊富に存在する材料で、超急速充電が可能なフレキシブル電池を実現することである*)。米スタンフォード大学(Stanford University)は今回、この目標を達成する「アルミニウム電池」の開発に成功したとしている。このアルミニウム電池は、正極(アノード)材に折り曲げ可能なアルミニウム箔を、負極(カソード)材にはグラファイトフォーム(黒鉛泡)を採用、電解液には液体塩を使い、1秒間で再充電することが可能だという。
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スタンフォード大学でHongjie Dai教授の研究室に所属する博士課程の学生Ming Gong氏は、EE Timesの取材に対し、「これまでにも、アルミニウム電池の実現に向けてさまざまな取り組みが進められてきたが、いずれも電圧が低く、ライフタイムサイクルが短いという結果に終わっている。今回われわれが開発したアルミニウム/グラファイト電池は、偶然発見することができたものだ。しかし、グラファイトが負極の候補材料としてふさわしいことが分かり、性能を高めることに成功した」と述べている。
リチウムイオン電池に匹敵する性能を備えたアルミニウム電池を実現するための秘策は、多孔質グラファイト負極を採用したことだという。
今のところ、アルミニウム電池の電圧はわずか2.5Vであるため、大半のデバイスに不可欠な5Vを生成するには、2つの電池を直列接続する必要がある。また、電池容量はリチウムイオン電池の1/3程度だが、クーロン効率が95%以上と高いことから、研究チームは、「リチウムイオン電池が最適化によって容量を高められたのと同様に、アルミニウム電池でも、容量をはじめ、理想の性能を実現できると楽観視している」という。
フレキシブルなアルミニウム電池は、電解液として液体塩を使用するという一風変わった特徴によって、低コストと不燃性を実現する。
Gong氏は、「電解液は、イミダゾリウムベースのイオン液体で作られている。固体前駆体であるEMIC(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物)とAlCl3(塩化アルミニウム)の2種類を混ぜ合わせると、融点が大幅に下がり、室温で液体になる」と説明する。
さらに、多孔質グラファイト負極を採用することにより、電池の電流量が増加した他、超急速充電も可能になったという。
Gong氏は、「多孔質である黒鉛フォームは、電解液と接する表面積が大きい。このため、充電中のインターカレーションに対するエネルギー障壁を低減させることが可能だ」と述べる。
また、アルミニウム電池がリチウムイオン電池と最も大きく異なる点として、フレキシブルかつ不燃性であることの他に、試作版で比較した際、リチウムイオン電池の7.5倍の充放電サイクルを実現可能であることが挙げられる。リチウムイオン電池は一般的に、1000回以上充放電すると、容量が著しく低下するといわれる。一方のアルミニウム電池は、7500回以上充放電しても、容量が低下しないという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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