Qualcommの勢いに陰りが見え始めている。モバイル機器向けSoC(System on Chip)で上昇気流に乗り、成長が続いている同社だが、スマートフォンという1つの市場への依存度が大き過ぎることが、問題の種となっているようだ。
Qualcommは2015年4月22日、2015年3月29日を末日とする第2半期の決算報告で、ライセンス収入の四半期記録を達成したことを明らかにした。ただし、年間売上高と利益の予測に関しては、2度目となる下方修正を行った。
Qualcommは、Samsung Electronicsの「Galaxy S6」と「Galaxy Note」のデザインウィンを失って、モバイル機器向けSoC(System on Chip)「Snapdragon」の売り上げが落ちたことから、将来的な不安を抱えている。同社はモデム市場をリードし、同社のベースバンドチップの売上高のほとんどをモデムが占める。また、収益の大部分をCDMA対応の携帯電話技術の特許ライセンスから得ている。
Qualcommは世界最大規模のモバイルチップベンダーであるにもかかわらず、最近の決算報告では、もろさが目立つ。同社は1つの市場セグメント(スマートフォン)に依存し過ぎているため、スマートフォンベンダーの2大トップであるAppleとSamsungがどのプロセッサを採用するかで収益が大きく左右されてしまうのだ。
Qualcommの携帯電話機向けモデムチップは、売り上げが減少傾向にある。これを受け、複数の金融アナリストがQualcommに対し、「スマートフォン以外の市場で収益を伸ばすための準備を進めているのか」と質問している。ここでいうスマートフォン以外の市場とは、具体的にはIoT(モノのインターネット)や自動車など、スマートフォン向けチップの売り上げの減少を補てんできる分野だ。
QualcommのCEO(最高経営責任者)であるSteve Mollenkopf氏は、2015年度の半導体部門の売上高予測を下方修正したことについて、「主な要因は、ハイエンド品における顧客シェアの変化による影響が大きかったことと、大手顧客に対する当社のシェアが減少したことにある」と説明している。
つまりは、こういう事だ。
「ハイエンド品における顧客シェアの変化」とは、AppleがQualcommのベースバンドモデムを採用しているが、ベースバンド/アプリケーションプロセッサのSnapdragonは採用していないことを意味している。
「大手顧客に対する当社のシェアが減少したこと」は、長きにわたってQualcommの顧客であったSamsungが、Galaxy S6/Galaxy NoteにQualcommの最新のSnapdragonではなく、自社で開発したプロセッサを搭載したことを指す。Qualcommは、Galaxy S6のモデムサプライヤとしてかなりのシェアを握ってはいるが、Snapdragonが採用されなかったことによるダメージは相当大きいと考えられる。
Mollenkopf氏は、決算報告会で、「顧客企業向けの製品ライフサイクルに関する問題は、現時点ではハイエンド品の顧客がAppleとSamsungの2社に集中していることで複雑化している」と述べていた。
スマートフォン市場の動向をコントロールすることはできないが、Qualcommは同社のコスト構造を変える必要性をはっきりと認識している。Mollenkopf氏は、「製品ライフサイクルの課題を解決しやすくするために、市場動向の影響を受けにくいポジションを構築したいと考えている」と述べている。
同氏は、「スマートフォンの周辺市場の売上高は増加傾向にある。このセグメントは、当社の半導体部門(QCT)における2015年の売上高の約10%を占める見通しだ。同セグメントは当社を支える柱の1つに成長すると期待される。周辺市場は、スマートフォン市場と投資対象が重複しているので効率がよい」と述べている。
「スマートフォン向けアプリケーションプロセッサのハイエンド品の売り上げが落ち込んでいるが、それを補てんできるような部門はあるのか」という質問に対し、Mollenkopf氏は猛烈に反論した。「当社の製品ロードマップは妥当のもので、幅広い機器メーカーからの需要がある。モデム市場でのリーダーシップも、当社の優位を支えている」(同氏)。
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