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“生体コンピュータ”の実現へ、米大学がCMOSを組み込んだ有機体の生成に挑む新技術(1/2 ページ)

米国のジョージア工科大学の研究チームが、超低消費電力の“生体コンピュータ”の実現に取り組んでいる。研究チームは、まずはCMOSセンサーと細胞を組み合わせて、創薬や医療診断の分野に生かしたいとしている。

» 2015年05月15日 13時10分 公開
[R Colin JohnsonEE Times]

 「合成生物学」は、生命の起源を意のままに操るという意味で正しく名付けられた学問だといえるだろう。他の生物から取り出した遺伝子を組み込むことにより、一段と機能性に優れた野菜を生産することなどが行われている。

 例えば、カレイの遺伝子を使って、傷みや変色のないトマトを作ったり、クラゲの遺伝子を使って、水やりが必要な時に発光するジャガイモを作ることができるという。さらに、人間の遺伝子をウシに組み込んで人間の母乳を作らせたり、全く何も存在しない状態から完全に新しい有機体を作り出すといった取り組みもある。

究極の目標は“生体コンピュータ”

 エレクトロニクス業界では、米国の研究都市Research Triangle Parkに拠点を置く半導体研究コンソーシアム「Semiconductor Research Corporation(SRC)」が、2013年に「Semiconductor Synthetic Biology(SSB)」プログラムを開始している。まさに今、その成果が実を結ぼうとしているところだ。最終的には、人間の遺伝子を半導体に組み込むことにより、ハイブリッド型のサイボーグのようなコンピュータの実現を目指すという。しかし、そこに至るまでには、まださまざまな段階を踏む必要がある。

 米国ジョージア州のジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)の助教授であるHua Wang氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「われわれが目指す究極の目標は、“生体コンピュータ”の実現だ。生体システムは、人間の脳と同じように、極めて低い消費電力で信号を処理することができる*)。最終的には、CMOSを組み込んだ生命体の実現が可能かどうかを確かめたいと考えている。現在は、CMOSと生物学的要素とを組み合わせて、信号処理や感知メカニズムに適用するという取り組みを進めているところだ」と述べている。ジョージア工科大学は、SRCのSSBプログラムから助成金を受けている。

*)関連記事:細胞の“ゆらぎ”を利用すれば超省エネマシンができる!? ――CiNetの研究開発

photo SRCでCMOSを使った細胞センサーの研究を行うチーム。左から、助教授のHua Wang氏、大学院生(博士課程)のTaiyun Chi氏、同じく博士課程のJong Seok Park氏 出典:ジョージア工科大学

 SRCの学際的研究特別プロジェクト担当ディレクタであるVictor Zhirnov氏は、「合成生物学に半導体を取り入れるという技術は、さまざまな分野に広がる可能性がある」と述べる。

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