EDA業界がIoT機器設計の分野に狙いを定めている。ASICを使ってIoT機器を設計することのメリットを強調し、クラウドを使った設計環境の提供に力を入れ始めている。
近年、EDAやファウンドリ、契約半導体設計業界のIoT(モノのインターネット)分野への参入に向けた動きが活発化している。ASICの設計・製造は、IoT市場で幅広く応用できる可能性があるという。EDA企業は、IoT機器関連の設計を始める際の障壁を緩和する目的に特化したプラットフォームやツールパッケージの開発に取り組んでいる。こうした動きによって、新しい形のカスタム関連デバイスが誕生するかもしれない。
カスタム半導体の設計を手掛けるOpen-Siliconでテクニカルソリューション部門のシニアディレクタを務めるHuzefa Cutlerywala氏は、EE Timesのインタビューに対して、「ASICに関しては、大きく2つの問題がある。その1つは、ASICの設計は長い時間がかかると考えられていることだ。そのせいで、IoT機器の設計チームはASICを使わずに、従来通りのやり方で設計する場合が多い。製品化までの時間は重要な課題の1つであるため、IoT機器の設計者はASICの利用を控えてきた。2つ目の問題は、リスクだ。面倒な設定をせずにすぐに設計に取り掛かれる方が、リスクを負う可能性は格段に低くなる」と述べている。
「ASICは、IoT機器の設計コミュニティに大きな利点をもたらす」とCutlerywala氏は言う。「意外かもしれないが、量産すればコストが下がるというのは、必ずしもその利点には入らない。IoT機器の開発者にとっては、ASICの導入によって、製品の差別化や安全性の向上、フォームファクタの調整が図れることの方が、コストを抑えることよりも重要なはずだ」と同氏は述べている。
IoT機器開発者がこうしたメリットを享受すると同時に、設計に要する時間とASICの利用によるリスクを減らすには、プラットフォームアプローチが適している。代表的な適用事例に、産業IoT向けセンサーハブがある。Open Siliconは数カ月にわたって、IoTプラットフォーム「Spec2Chip」を導入したデモを行っている。
Open Siliconのプラットフォームには、事前に設計されたRTLが含まれている。例えば、無線通信、演算処理、センターインタフェース、ソフトウェアのサポートエコシステム、さまざまなプロトコル向けのサービス、OS、分析など、既に現場で実績のある機能が挙げられる。設計はスケーラブルで、ハードウェア/ソフトウェアのパーティショニングやカスタムIPの統合を設定できる。開発者は、業務のニーズに適合するようにインタフェースやCPU、プロトコルの組み合わせを選べる。ハードウェアブロックはほとんどが既に設計されていて、ドライバやプロトコルスタックなどの関連ソフトウェアも既に開発済みだ。そのため、完全なカスタム設計を行った場合と比べると、数カ月分の工程を進めた状態でプロジェクトをスタートできる。
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