TSMCは2015年6月に、EDAベンダーであるCadence Design SystemsとSynopsysとの協業によって、同様のIoTプラットフォームを発表した。
CadenceのIoT IP(Intellectual Property)サブシステムは、TSMCの55nm ULP(超低消費電力)プロセス向けとして、TensilicaのDSPや、アナログ/デジタルセンサーインタフェースを搭載する。また、SynopsysのIoTプラットフォームは、TSMCの40nm ULPに向けて、「ARC EM5D」プロセッサを搭載する他、検証済みのセンサーやコントロールIPなどを採用している。いずれも、あらかじめ設定された設計エレメントに向けて、ソフトウェアサポートを提供するという。
このようなプラットフォームを利用すれば、より柔軟な設計ができそうだが、多くのIoT開発チームは現在も、ASIC設計に取り組むことができていない状況にある。理由としては、半導体チップ開発に関する専門技術が不十分だったり、コストが障壁となって必要な設計ツールを入手できなかったりと、さまざまな制約が存在することが挙げられる。Open-Siliconのような設計サービスを利用すれば、設計業務の引き継ぎもできるので、こうした制約を乗り越えることが可能になるだろう。
そして現在、もう1つの選択肢として“クラウド上での設計”が実現しようとしている。
Silicon Cloud International(SCI)は、自らを“IoT設計の実現可能性を追求する企業”と称している。同社は現在、Webベースの環境下で、ASICを完全に設計できるように取り組んでいる。
SCIは、学校と提携してトレーニングを提供したり、EDAやファウンドリと協業したりすることで、特にIoT機器開発者を対象とした“サービスとしてのワークフロー”を作り上げたという。
SCIのCEO(最高経営責任者)を務めるMojy Chian氏は、EE Timesによるインタビューの中で、「IoT企業の多くは、半導体チップメーカーではなく、システム開発メーカーとしてのバックグラウンドを持っている。当社はこうした企業向けに、新しい形のインフラストラクチャや設計ワークフローを提供していく」と述べている。SCIは、そのサービスを、提携した教育機関に利用してもらい、改良を加えてきた。2015年後半には、同サービスを実用化できる見込みだとしている。
SCIの目標は、開発チームが、一般的な市販のEDAツールや、半導体ファウンドリのプロセスライブラリを使って設計できるようにすることだ。ツールやライブラリを個別に入手する必要はないという。代わりに、プライベートクラウド上に用意されているツールを使う仕組みだ。使用回数に応じて単価を支払う(価格はサプライヤによって異なる)。SCIは、クライアント側の設計とベンダー側のIPの両方についてセキュリティを確保すべく、一般的なPCからではなく、専用のクライアントデバイスからサービスにアクセスしてもらう予定だという。
ASICは、着実にIoT機器設計の分野への移行を目指している。IoT機器設計においてASICが使われ始めれば、ASICが長く使われるようになる可能性もある。Chian氏は、「(IoTは、ASICにとって)息の長い市場になるだろう。新しいIC設計企業が、IoT市場から生まれることを期待している」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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