インターシルは2015年6月、都内で新製品の60V同期整流型降圧コントローラー「ISL8117」を発表。デューティサイクルを低くしたことによって、60Vから0.6Vへの直接降圧を可能にした。通信/ネットワークシステムやセキュリティ監視システム、テスト/計測機などを対象に展開する。
産業機器の中間電圧変換を不要に――。
高耐圧の産業機器は、低電圧で動作するマイコンやメモリなどのデバイスのために、高電圧の電力を低電圧に変える必要がある。高電圧から低電圧の電力を生成するためには、一度中間電圧に変換する「2段階DC/DC変換」が行われてきた。高電圧から一段階で、低電圧駆動デバイスが求める高精度の低電圧を生成できなかったためだ。しかし、2段階変換方式は、システムコストや回路のサイズ、複雑さが増すといった課題がある。
インターシルは2015年6月、中間電圧変換を不要にする60V同期整流型コントローラー「ISL8117」を発表した。デューティサイクルを低くしたことによって、最大60Vから最小0.6Vへの直接降圧を可能にした。
「ISL8117」はなぜ中間電圧変換を不要にできたのか。同社は制御方式に「バレー電流モード」を採用した。バレー電流モードは、PWM(パルス幅変調)のオフタイムのインダクタ電流(バレー電流)をサンプリングするもの。一般的なオンタイムにインダクタ電流を検出するピーク電流モードよりも、検出時間が短く済み、結果的に非常に短いオンタイム(40ns)が可能になる方式だ。これにより、低デューティサイクルを実現し、高い入力電圧から低い出力電圧への降圧が可能になった。
安定した出力を実現するため、独自技術の「アダプティブスロープ補正」を導入した。同技術はアダプティブランプを調整することにより、低調波振動のない安定動作を実現するという。これにより、外部での補正が不要になる。
出力精度は±1.5%で、最大変換効率は98%。バルス・スキップ機能を搭載し、軽負荷時の効率も高めている。
入力電圧範囲は4.5〜60Vで出力電圧範囲は0.6〜54V。スイッチング周波数は100kHzから2MHzの範囲で選択できる。
パッケージは4mm角サイズのQFNと6.4×5mmサイズのHTSSOPの2種類がある。既に量産出荷を開始し、価格は1000個購入時の単価はQFN品が1.80米ドル、HTSSOP品が1.95米ドルとなっている。
リファレンス・デザインボードとしては、FA機器、ロボットなどの低出力アプリケーション向けの「ISL8117EVAL1Z」(入力電圧:4.5V〜60V、出力電圧:3.3V/6A)と、通信機器、アミューズメント機器などの高出力アプリケーション向けの「ISL8117EVAL2Z」(入力電圧:18V〜60V、出力電圧:12V/20A)を用意。いずれも価格は60米ドルとなっている。
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