フランスの新興企業であるPrimo1Dは、RFIDチップを搭載したマイクロエレクトロニクスパッケージを糸に織り込む技術「E-Thread」を手掛けている。E-Threadを応用すれば、洗濯機と通信して、洗濯の強度や時間などを調節する“スマート衣服”が実現するかもしれない。
RFIDタグを衣服に取り付けることは、10年以上前からごく一般的に行われるようになった。しかし、もし電子部品を衣服用の布地そのものに織り込んだり、それを洗濯機で洗うことさえも可能だとしたら、どうなるだろうか。
これを実現できる「E-Thread」の開発を手掛けたのは、フランスのグルノーブル(Grenoble)に拠点を置く新興企業Primo1Dである。
Primo1Dは2013年8月に、CEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)からスピンオフして設立された企業だ。同社は、“ウェアラブル”のコンセプトを極限まで高めるべく取り組みを進めてきた。
ウェアラブルデバイスの中には、衣服の隙間から出し入れができる物もある。Primo1Dは、「RFIDチップを、アンテナとして機能する2本組の導線に直接、接続して、それを糸に織り込める技術」であるE-Threadを手掛けている。E-Threadには、パッシブRFIDが内蔵されている。電力供給が不要な上、さまざまな種類の一般的なUHF帯RFIDリーダーで読み取ることができるという。
Primo1DのCEO(最高経営責任者)であるEmmanuel Arene氏は、EE Timesの取材に応じ、「当社が最初に売上高を上げられるのは、2016年になるとみている」と語っている。E-Thread技術の最初の用途としては、病院やホテルなどで使われるリネン製品や繊維製品など、専門業者によるクリーニングや、在庫管理が必要なものが想定される。
Primo1Dは、半導体チップメーカーではない。同社の技術の目新しさは、特定の技術やプロセスを開発し、マイクロエレクトロニクスパッケージに適用することにある。なお、Primo1Dに向けてRFIDチップを供給しているのは、米国のImpinjである。
RFIDチップとアンテナがいったん糸(綿、化繊、ウールなど)に織り込まれると、布地メーカーが、その糸を使って衣服やリネン、その他の布製品に織る。その際は、標準的な織機を使用できるという。
Arene氏は、「既存の製造技術(織機など)を使えるかどうかが、新しい技術を導入する際の鍵になる」と説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.