イタリアの服飾メーカーBenetton(ベネトン)は2003年初めに、PhilipsのRFID技術を適用したスマートラベルを導入する計画を発表した。しかしその当時、世間からはプライバシーに対する批判が巻き起こり、最終的には「ベネトン不買運動」にまで進展してしまった。
このようなプライバシーに対する懸念は、現在も存在する。このためスマートタグは、倉庫内や小売店内でのみ、また製品の販売時までのみの利用に限定されてきた。消費者が製品を購入する時に、チップが無効化される。
E-Thread技術では、RFIDタグを目で確認することができず、衣服から切り離すこともできない。このため、例えば偽造者にとっては、RFIDチップやアンテナの位置を特定できなくなり、タグを無効化したり、模倣品を正規品として販売することが不可能になる。
Arene氏は、「E-Thread技術は、盗難防止の対策、製品のトレーサビリティの実現、ブランドの保護などに適した技術だといえる」と説明する。
さまざまな販売経路で商品が売られている現在、RFIDチップは、商品のトレーサビリティを実現する上で不可欠になっている――。Arene氏はこのように語る。現在、在庫精度は約70%程度だという。多くの場合、見当たらない商品が、盗難されたのか、紛失したのか、それとも間違った場所に保管されているのかについては、分からないそうだ。
E-Threadの将来的な用途としては、例えば、洗濯時間や強度、水温などを洗濯機と通信して調節することができる“スマート衣服”などが挙げられる。現在、Primo1Dは、ランドリーサービス業界をE-Threadのメインターゲットとして狙っているという。「既に最初の顧客に試作品を提供し、評価を進めてもらっている」(Arene氏)。
Primo1Dは2014年、300万ユーロ(約4億円)の資本金を調達している。従業員は8人だ。Arene氏は、IBM MicroelectronicsやSoitecに勤務した経験がある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.