九州大学の君塚信夫主幹教授らによる国際共同研究グループは、太陽光程度の弱い光を活用して、フォトンアップコンバージョン効率を最大化することが可能な有機−無機複合材料を開発した。
九州大学の君塚信夫主幹教授らによる国際共同研究グループは2015年8月、太陽光程度の弱い光でも、フォトンアップコンバージョン効率を最大化することが可能な有機−無機複合材料を開発したことを発表した。
フォトンアップコンバージョンとは、低エネルギーの光を高エネルギーの光に変換する技術で、太陽電池や人工光合成の効率を大きく向上させることができることから早期実用化が期待されている。
九州大学 大学院工学研究院応用化学部門の君塚主幹教授や楊井伸浩助教、イタリアのミラノ・ビコッカ大学のアンジェロ・モングッチ博士らの国際共同研究グループはこれまで、分子組織化を利用し溶液中で高効率なアップコンバージョンに成功していた。今回は、溶媒を含まない固体中での高効率化に成功した。
今回行った研究では、金属錯体骨格(MOF)という結晶性材料中に、アクセプター分子を規則的に配列させ、MOFを用いたアップコンバージョンを世界で初めて成功させた。これまで、アップコンバージョンを行うためには、レーザー光など太陽光に比べて1000倍以上も強い光を必要としていた。こうした中で、太陽光のような弱い光を用いたアップコンバージョンでも高い効率を実現するために、共同研究グループでは2つの課題を解決した。
1つは「ドナーからアクセプターに励起三重項エネルギーをいかに効率よく移動させるか」である。これに対しては、MOFのナノ結晶を合成し、そのナノ結晶表面をドナー分子で修飾するというコロイド・界面化学的な新しいアプローチを導入した。
もう1つは「その励起三重項エネルギーをアクセプター分子間で高速に拡散させるか」である。この課題に対しては、MOFの構造中にアクセプター部位(ジフェニルアントラセン)を規則的に配列させることで、励起三重項エネルギーを高速に拡散させることを可能とした。
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