メディア

次々世代のトランジスタを狙う非シリコン材料(3)〜III-V族半導体の「新たなる希望」福田昭のデバイス通信(35)(1/3 ページ)

前回は、ゲルマニウム(Ge)をチャンネル材料とするMOSFETの研究開発の歴史と現状を紹介した。今回はもう1つの材料であるインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)である。InGaAsの歴史と背景にあるIII-V族化合物半導体とともに、研究開発の状況を解説する。

» 2015年08月05日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

始まりは発光デバイスだった

 前回は、ゲルマニウム(Ge)をチャンネル材料とするMOSFETの研究開発状況を説明した。今回は、もう1つの材料であるインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)とその背景であるIII-V族化合物半導体を解説するとともに、研究開発状況をご報告する。

 InGaAsは「III-V族化合物半導体」の1つである。「III-V族化合物」とはIII族元素とV族元素で構成される化合物のこと。III族元素にはホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などがある。化合物半導体を構成するのは主にAlとGa、Inであり、特にGaが使われることが多い。V族元素には窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などが存在する。化合物半導体を構成するのは主にNとP、Asだが、まれにSbが使われることもある。なお前回で説明したゲルマニウム(Ge)とシリコン(Si)は、IV族の元素である。

 代表的なIII-V族化合物半導体には、ガリウム・ヒ素(GaAs)や窒化ガリウム(GaN)、インジウム・リン(InP)などが存在する。応用は高速・高周波・低雑音トランジスタ、高周波パワー・トランジスタ、マイクロ波IC、半導体レーザー、発光ダイオード(LED)、受光素子(フォトダイオード)など。集積回路ではなく、単体のトランジスタ、あるいはダイオードとして利用されることが多い。

 歴史を振り返ると、III-V族化合物半導体は電子デバイスではなく、発光デバイスとして実用化が始まった。発光ダイオード(LED)、そして半導体レーザーである。GeとSiには発光する性質がない。このため、発光デバイスはGaAsやガリウム・リン(GaP)、さらにはGaNなどのIII-V族化合物半導体の独壇場となった。

 一方で、III-V族化合物半導体の電子デバイスとしての実用化は、IV族半導体に比べるとかなり遅れた。GaAsトランジスタが本格的に商用化されたのは、1980年代に入ってからである。

主な半導体(および金属)の元素。?族と?族、?族の元素を表記した (クリックで拡大)
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.