本稿では、リソグラフィ技術の将来を14nm世代から5nm世代まで展望するシンポジウムにおける、ニコンの講演内容を紹介する。同社は、10nm世代にArF液浸露光技術を適用する場合、2つの大きな課題があると指摘した。「EPE(Edge Placement Error)」と「コストの急増」だ。
半導体の製造装置と材料に関する北米最大のイベント「SEMICON West(セミコンウエスト)」が2015年7月14日〜16日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された。7月15日には、リソグラフィ技術の将来を14nm世代から5nm世代まで展望するシンポジウム「Making Sense of the Lithography Landscape: Cost and Productivity Issues Below 14nm and the Path(s) to 5nm」が開催された。
このシンポジウムでは露光装置の大手ベンダーや半導体ファウンドリ、リソグラフィ技術の研究開発組織などが最先端の技術動向を解説した。露光装置の大手ベンダーであるニコンは「193 Immersion Lithography at the 10nm node and Beyond」と題してArF液浸露光技術で10nm以下の微細なパターンを解像する技術を講演した。講演者は、Nikon Research Corporation of AmericaのStephen Renwick氏である。本稿では同氏による講演の概要をご報告しよう。
Renwick氏は始めに、リソグラフィ技術の主要な動向を2020年まで展望した。CMOSロジックのプロセスは、2014年に20nm世代であったのが、2020年には5nm世代にまで微細化される。2014年〜2015年に主役のリソグラフィ技術は、300mmウェハーとArF(波長193nm)液浸露光の組み合わせである。この組み合わせに、マルチパターニング(多重露光)技術を付加することで、微細化を進める。2017年に採用される10nm世代までは、上記の要素技術でCMOSロジックが量産されるとニコンは予測する。
ただし2018年の7nm世代以降は、これまでとは様相が異なってくる。別種のリソグラフィ技術を補足的に採用するようになる。自己組織化(DSA: Direct Self Assembly)技術、ダブル電子ビーム描画技術、EUV(Extreme Ultra-Violet)リソグラフィ技術などである。極めて微細な加工を必要とするレイヤーにだけ、こういった補足的な技術を当てはめる。
ここで重要なのは、ニコンでは「ArF液浸 対 EUV」といった二項対立は考えていないことだ。従来技術であるArF液浸リソグラフィ技術に、さまざまな技術の選択肢が補足的に加わると見ている。
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