物質・材料研究機構(NIMS)の館山佳グループリーダーらによる研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の劣化問題について、陽イオン分子の拡散が大きな影響を与えていることを、原子レベルからの理論計算により突き止めた。
物質・材料研究機構(NIMS) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の館山佳グループリーダーや同ナノ材料科学環境拠点の春山潤ポスドク研究員らの研究グループは2015年8月、ペロブスカイト太陽電池の劣化問題について、陽イオン分子の拡散が大きな影響を与えていることを、原子レベルからの理論計算により証明した。
ペロブスカイト太陽電池は、安価で高い効率を実現できる次世代太陽電池として注目されている一方で、実用化に向けては、劣化が速いなど耐久性の問題が指摘されている。また、電流・電圧曲線に大きなヒステリシスが現れて、変換効率が変動する場合が多いことも課題となっている。
今回の研究では、第一原理計算と反応経路の探索手法を組み合わせることで、実用化の障壁となっている劣化の問題と変換効率の再現性について、その原因を解明した。具体的には、メチルアンモニウムヨウ化鉛(CH3NH3PbI3、以下MAPbI3)とホルムアミジニウムヨウ化鉛((NH2)2CHPbI3、以下FAPbI3)という代表的なペロブスカイト材料内の、空孔を介したイオン拡散メカニズムについて調べた。この結果、これまで予測されていたヨウ化物イオン(I-)に加えて、陽イオン分子(MA+など)も容易に拡散し、移動することを初めて証明することができたという。
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