東北大学の陳明偉教授らは、3次元構造を持つナノ多孔質グラフェンを用いることで、大容量の蓄電と耐久性の向上を可能とする「リチウム空気電池」の開発に成功した。実験結果から試算すると、1回の充電で電気自動車(EV)が走行できる距離は500km以上とみられている。
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の陳明偉教授らの研究グループは2015年9月、3次元構造を持つナノ多孔質グラフェンを用いることで、大容量の蓄電と耐久性の向上を可能とする「リチウム空気電池」の開発に成功したことを発表した。実験結果から試算すると、1回の充電でEVが走行できる距離は500km以上とみられている。
新たな二次電池として注目されるリチウム空気電池は、リチウム金属、電解液と空気のみで作動し、電気容量はリチウムイオン電池の5〜8倍を実現することができる。陳教授らはリチウム空気電池に注目し、2012年にナノ多孔質金を用いたリチウム空気電池の論文を発表した。このリチウム空気電池は、単位触媒重量あたりの電気容量が300mAh/g(一般的なリチウムイオン電池は150mAh/g)で、EVに搭載した場合に、1回の充電で270km(同160km)を走行することができるという。しかも、ナノ多孔質金を用いたリチウム空気電池は100サイクルの充放電が可能なことを示した。
これまでの研究では、高い電気伝導性が得られ、空隙率が99%のナノ多孔質グラフェンを正極として用いることで、現行のリチウムイオン電池に比べて30倍以上(8300mAh/g)の電気容量を持つ電極材料を開発していたが、充電時の過電圧が極めて高くエネルギー利用効率が50%程度にとどまるなど課題もあった。
今回の研究では、大きな電気容量を持つ炭素材料に、少量のルテニウム系触媒を添加した。これにより、電極自体が持つ大きな比表面積、空隙率や電気伝導性を損なわずに、大きな電気容量(2000mAh/g)と充電電圧(4.0V以下)を同時に実現することができた。合わせて、エネルギー利用効率は72%に向上し、100回以上も安定して作動する空気電池の開発に成功した。
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