今回開発した空気電池には、正極電極としてRuO2ナノ粒子触媒をグラフェンで挟んだ窒素ドープナノ多孔質グラフェンを採用した。新開発のナノ多孔質グラフェン電極は、大きさが100〜300nmの微細孔を備え、リチウムイオンや酸素、電解質の輸送を円滑に行うことができる。
大きな空隙の中に、生成物である過酸化リチウムが貯蔵され、その大きな表面積効果によって過酸化リチウムの分解反応が促進されるという。充電後は過酸化リチウムが消失していることも確認しており、放電前の状態に戻ることが明らかとなった。使用前と50サイクル充放電後のRuO2ナノ粒子触媒の状態を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、充放電を切り返した後でも粒子のサイズに変化はなく、充放電過程で触媒に大きな変化や劣化が生じないことを確認した。
RuO2ナノ粒子を挟んだナノ多孔質グラフェン電極。左は充電前の走査型電子顕微鏡(SEM)像。中央は50サイクル充電後のSEM像。右は充電試験後のナノ多孔質グラフェン電極のTEM像 (クリックで拡大) 出典:東北大学研究チームは、リチウム空気電池の充放電を繰返して行う耐久(寿命)試験も実施した。その結果、RuO2ナノ粒子をグラフェンで挟んだ窒素ドープナノ多孔質グラフェンは、フル放電した時に、電極単位重量あたりの電気容量は最大8300mAhとなり、電気容量を2000mAhで固定すると、100サイクル以上の充放電に対応できることが分かった。
充放電時の電流密度を変化させる実験も行った。その結果、従来のリチウム空気電池よりも充電スピードは速く、エネルギー利用効率は72%を超えることが分かった。これにより、新たに開発した電極材料は、エネルギーロスが少ない正極であることを確認することができた。
今回開発した電極材料には少量のルテニウムを使用している。金や白金などに比べると材料コストは低いが、実用レベルになると割高感は否めない。研究チームでは、リチウム空気電池の実用化に向けて、さらなる性能向上(4000〜5000mAh/gの電気容量と低い過電圧の両立など)と低コストの触媒開発などに取り組む考えである。
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