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電子機器廃棄物、止まらぬ不正取引欧州でさえ再利用率は低い(1/2 ページ)

欧州では、電子機器廃棄物のリサイクル率は35%だという。WEEE(電気電子廃棄物)指令では、2016年にリサイクル率65%を目指すとしている。だが、電子機器廃棄物の不正取引の防止や、適正管理には困難もつきまとうようだ。

» 2015年09月04日 10時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

 国連大学(United Nations University)とINTERPOL(国際刑事警察機構)が2年間にわたり行った共同研究によると、欧州内で2012年に廃棄された電子機器のうち、全体のわずか35%しか適切にリサイクルされておらず、残りの65%は不法に投棄/取引されているということが明らかになった。

 この数字を、EU(欧州連合)が2003年に発行したWEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment:電気電子廃棄物)指令が掲げる高い目標と比べてみよう。EUは当時、2016年までに電気・電子機器廃棄物全体の少なくとも85%をリサイクルすることを目標としていた。

 2012年の実際のリサイクル量と、2016年の目標値との差は非常に大きい。ここから、さまざまな問題が提起される。

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 WEEE指令は、大きな失敗に終わろうとしているのだろうか。環境先進国が集まる欧州でさえうまく対応できていない中、特に米国や中国など、他の国々に対してどのような期待が持てるというのか。最も重要なのは、実際にリサイクルされている電子機器廃棄物が、なぜそれほどまでに少ないのかという点だ。

 目標を設定することは簡単だが、それを実行するのは非常に難しい。さらに、法律を施行することは、想像以上に複雑で問題も多い。

 しかし、56ページにわたるリポート「Countering Waste Electrical and Electronic Equipment Illegal Trade(CWIT:電子・電気機器廃棄物違法取引の防止)」が2015年8月30日に発表されたことで、この問題が途中で投げ出される心配はなくなるかもしれない。同リポートでは、電子機器廃棄物の行方を追跡することにより、サプライチェーンの困難な課題が分析されている。

EUが資金を提供

 CWITプロジェクトには、EUが資金を提供している。参加メンバーには、INTERPOLと国連大学の他、国連地域間犯罪司法研究所(UNICRI:United Nations Interregional Crime and Justice Research Institute)、WEEEフォーラム(WEEE共同実施体)、スイスのCross Border Research Association 、Zanasi & Partners、Compliance and Risksが名を連ねる。

 環境団体は通常、電子機器廃棄物の現状に警鐘を鳴らすリポートを定期的に発行する。しかしCWITのリポートは、その全体的な研究アプローチによって注目を集めている。WEEE産業や法執行機関、弁護士、大学、サプライチェーン問題を専門とするコンサルタントなども研究に携わっているのだ。

 CWITは、WEEEチェーンにおける犯罪の危険性や違法な活動を低減すべく、さまざまな方法や活動の具現化を目指していく。

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