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半金属のビスマスが薄膜になると半導体に!次世代高速デバイスの有力材料か!?(1/2 ページ)

半金属であり、ディラック電子を持つビスマスを薄膜にすると、その電気的特性が半導体に変わることが実証された。

» 2015年09月07日 11時00分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 半金属であるビスマスを薄膜にすると、その電気的特性が半導体に変わる「半金属半導体転移」を起こすことが実証された。

 実証したのは、東京工業大学の平原徹准教授や東京大学の長谷川修司教授、自然科学研究機構分子科学研究所の田中清尚准教授、木村真一准教授(現大阪大学教授)、お茶の水女子大学の小林功佳教授らの研究グループ。2015年9月3日に米国物理学会誌「Physical Review Letters(フィジカルレビューレターズ)」で公開された。

大きな移動度を持つ「ディラック電子」

 電子デバイスを高速動作させるには、電子移動度の大きい物質を用いる必要がある。最近、通常の電子と異なったエネルギーと運動量の分散関係を持つ「ディラック電子」が大きな移動度を持つ電子として注目されている。このディラック電子を持つ物質としては、グラフェンが知られ、その電子移動度は、シリコンのおよそ10倍(約1万5000cm2/Vs)だ。

1960年代に予測も

 今回の研究の対象となったビスマスは、固体中でディラック電子が存在することが分かった最初の物質であり、世界中で1960年代から研究されてきた。ただ、デバイスに応用するには、電子移動度の大きさとともに、バンドギャップを持つ半導体であることが不可欠だ。グラフェン、ビスマスともに、半金属でありバンドギャップがなく、何らかの方法で半導体に変える必要があった。

 そうした中で、1967年には旧ソ連の理論物理学者であるV. B. Sandomirskiiが、ビスマスを30nm程度の薄膜にし、量子サイズ効果を利用することで、半金属半導体転移が起こると予想していた。しかし、Sandomirskiiの予想から50年近くが経過しても、ビスマス薄膜で半金属半導体転移が起きているという明確な実験証拠は、存在しなかった。

ビスマス薄膜の半金属半導体転移(理論)。3次元の厚いビスマスは(a)のような半金属だが、30nm程度の厚さの薄膜にすると(b)のような半導体になることが予想された 出典:東京工業大学
角度分解光電子分光法の原理 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学

高品質薄膜をUVSORで測定

 東工大の平原准教授らの研究グループは、高品質のビスマス薄膜を作成し、その電気的特性の測定に取り組んだ。

 測定は、分子科学研究所のシンクロトロン放射光施設「UVSOR」で実施。UVSORの偏光可変の低エネルギー角度分光電子分光装置を用いることで、これまで報告例がほとんどなかったビスマス薄膜の内部の電子状態を高精度で観測することに成功したという。

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