「IBM Watson」プロジェクトのCTO(最高技術責任者)であるRob High氏。「コグニティブコンピューティングは次世代を担う期待の技術であり、Watsonが道を切り開く」という同氏がWatsonの可能性について語った。
「IBM Watson」プロジェクトのCTO(最高技術責任者)として、コグニティブコンピューティングの発展に尽力するRob High氏。だが、2012年半ばまでは、コグニティブコンピューティングの有用性を信じていなかった――。
2012年当時、High氏はサービス指向型アーキテクチャ分野のIBMフェローだった。同氏は、WatsonプロジェクトのCTOへの就任を依頼されたが「2度にわたって断った」と明かす。
同職を固辞したのは、Watsonチームのことを「よく知らなかったからだ」という。Watsonは2011年にテレビのクイズ番組「Jeopardy!」に挑戦して勝利した。だが、同氏は、「Watsonチームを遠目に見る限り、IBM Power Systems上でWatsonを動作させることに本気で取り組んでいるように思えなかった」と話す。
しかし、当時の上司はHigh氏に対し、「断り続けることはできない。辞令を受けるしかない」と伝えた。
こうしてやむをえずWatsonプロジェクトのCTOの職を受けたHigh氏だったが、就任後は一転、コグニティブコンピューティングは次世代を担う期待の技術であり、Watsonが道を切り開くことになると確信したという。
High氏は、米国カリフォルニア州サンノゼで2015年9月23〜24日に開催された「RoboBusiness」の基調講演で、数百人の出席者を前に「コグニティブコンピューティングは近い将来、産業の主流になり、今日のトランザクション処理と同様に重要な技術になるだろう」と語った。
「今日のコンピューティング技術では、定量化可能な構造化データの処理が大部分を占める。しかし、コグニティブコンピューティングの登場によって、その割合は減っていくだろう。コグニティブコンピューティングによって多くの非構造化データを創出されるが、そのうち80%は旧来のコンピュータでは処理できない形式である。Watsonやコグニティブコンピューティングは、人間の状態を理解して有意義な結論を導き出す新たな可能性を生み出した。その一例として、Appleの『Siri』などの対話型システムがある」(同氏)。
さらに、「現在の製品はまだ少し荒削りな部分があるが、今後必ず進化する」と述べた後、Watson技術のヘルスケア市場への適用事例について説明した。
「現在は“訓練データにほぼ対応できる”レベルで、十分とはいえないが、新入社員並みの処理効率を期待することは可能だ。システムはライブデータで常に再訓練されている。推論戦略を進化させる中で、実際の患者とのやりとりの際も専門家に相談した時のような安心感を提供できるように、さらに精度を高めている」(同氏)。
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