半導体業界のM&Aが相次ぐ中、Texas Instruments(TI)は、このような流れに乗る必要性はまったくないと話した。
Texas Instruments(TI)は2015年10月21日(米国時間)、同社の2015年第3四半期(7〜9月期)の業績発表を行い、予想を上回る成果を達成したことを明らかにした。同社のCFO(最高財務責任者)であるKevin March氏は、その後に行われたアナリストとのカンファレンスコールにおいて、「半導体業界では現在、M&Aが相次いでいるが、当社はこうした動きに対し、とり急いで参加するつもりない」との見解を明らかにした。
TIの同四半期における売上高は34億3000万米ドルで、前年同期比では2%の減少となっている。利益は7億9800万米ドルで、前年同期比で3%減少した。ただし、売上高、利益ともにアナリストの予想値を上回る結果となっている。
March氏は、「当社は、2011年にNational Semiconductorを買収した時点で、優位性を確立することに成功したといえる。半導体業界では現在、M&Aの動きが相次いでいるが、当社には、そのような緊張状態の中にあえて飛び込んでいく理由がない」と述べている。
同氏は、「M&Aを行っている多くの企業の狙いは、注力していくターゲット分野を変更したり、規模を拡大することなどではないだろうか」と述べる。「当社は既に、大きなスケールメリットを獲得している他、アナログと組み込みプロセッシングという2つの確立された市場機会に注力できている。このため、M&Aが必要だとは考えていない」と付け加えた。
March氏は、「TIが買収を模索する場合には、戦略がぴったり合致し、長期にわたって利益を生み出すことが可能なアナログ半導体メーカーを狙うだろう」と言う。
「もし当社が買収を検討するとしたら、幅広い製品を手掛け、幅広い顧客基盤を持っていることの他、売上高全体に占める産業/自動車分野の割合が大きいこと、非常に優秀な研究開発チームを抱えていることなどを挙げる」(同氏)。
また、March氏は冗談交じりに、「TIは実のところ、最も好みに合った半導体メーカーを買収しているといえるかもしれない。自社株を買い戻しているのだから」と述べた。
「当社は現在、自社株の買い戻しによって、取得した株式に対して7%のフリーキャッシュフロー利回りを得ている。統合リスクも全くない。顧客に焦点を合わせた事業の運営を容易に実現することができる方法だといえる」(同氏)。
半導体業界ではここ18カ月の間、かつてない勢いで合併買収が進んでいる。2015年10月21日(米国時間)には、Western Digitalが、NAND型フラッシュメモリを手掛けるSanDiskを190億米ドルで買収すると発表した他*)、半導体装置メーカーであるLam ResearchもKLA-Tencorを106億米ドルで買収予定であることを発表するなど、2件の買収案件が明らかになったばかりである。
*)関連記事:Western Digital、SanDiskを190億ドルで買収
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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