半導体業界のM＆A、2015年のペースは例年の6倍：まだ止まる気配なし

IC Insightsが、半導体業界における2015年9月までの大型買収案件（買収額が1億米ドル以上）をまとめた。買収額の総計は700億米ドル超に上り、過去5年間の平均に比べて約6倍と、非常にハイペースでM＆Aが進んでいることが分かる。

[村尾麻悠子，EE Times Japan]

　2015年、半導体業界では活発なM＆Aが続いている。特徴的なのが、大手メーカーが大手メーカーを買収するという、大型買収案件が相次いでいることだ。米国の市場調査会社IC Insightsは2015年9月25日（現地時間）、同月時点での買収案件が総額で726億米ドルに上ると発表した。これは、2010〜2014年の半導体業界における年間平均買収総額の約6倍に相当するという。2015年は、いかにハイペースでM＆Aが進んでいるかが分かるだろう。

　IC Insightsは、2015年1〜9月までの主な買収案件をまとめた。

発表	買収先	買収元	買収額（米ドル）	進捗（しんちょく）/完了予定
1月	Silicon Image	Lattice Semiconductor	6億700万	完了
2月	ドイツLantiq	Intel	非公開	完了
	Entropic Communications	MaxLinear	2億8700万	完了
3月	Freescale Semiconductor	オランダNXP Semiconductors	118億	2015年後半
	Vitesse Semiconductor	Microsemi	3億8900万	完了
	ISSI	中国Uphill Investment	7億3100万	2015年第3四半期
4月	OmniVision Technologies	中国Hua Capital	19億	2016年第1四半期
5月	Micrel	Microchip Technology	8億3900万	完了
	Broadcom	Avago Technologies	370億	2016年1月
	NXPのRF事業部	中国JAC Capital	18億	2015年後半
6月	Altera	Intel	167億	2016年初頭
	Cypress Semiconductor TrueTouch事業	台湾Parade Technologies	1億	2015年第3四半期
7月	NXPのCMOSセンサー事業	オーストリアams	非公開	完了
9月	Atmel	英Dialog Semiconductor	46億	2016年第1四半期
2015年9月25日時点での情報。特に国名を記載していないものは米国企業である（ただしAvagoはシンガポールにも本拠地を置いている）　出典：IC Insights

大型案件以外も多い

　上記で挙げられているのは、買収額が1億米ドルを超えるものだが、1億米ドル未満でも、ロームがアイルランドPowervationを7000万米ドルで買収、IntersilがGreat Wall Semiconductor（GWS）を1900万米ドルで買収するなど、活発なM＆Aが行われている。

　この他、QualcommがIkanos Communicationsを4700万米ドルで買収すると発表したことに加え、Micron Technologyが、中国半導体メーカーのTsinghua UniGroupに230億米ドルで買収を持ちかけられていると報道されるなど^＊）、半導体業界では引き続きM＆Aが進むとみられている。

＊）関連記事：中国半導体メーカー、マイクロンに230億ドルで買収案

　IC Insightsは、半導体業界でM＆Aが増加し、ICメーカーの数が少なくなっていることについて「業界の成熟」と分析している。同社はプレスリリースで、「相次ぐM＆Aに加え、新興のICメーカーにとって市場参入への機会が少ないことや、ファブライト^＊）へ移行する傾向が強いこと、設備投資額が減少していることなど、全ての要素は、今後5年間の半導体業界を大きく変えていくだろう」との見解を示している。

＊）ファブライト：自社でも最小限の製造能力を維持しつつ、外部にも製造を委託すること。