米国の新興企業が、偽造薬品や偽造チップを判別する新しい技術の開発に取り組んでいる。同技術の要となっているのが、直径数ミクロンという非常に小さな粒子だ。
偽造電子部品の問題が深刻化してきたのは、今から数年前だ。IHS(当時はIHS iSuppli)が2012年に発表したデータによれば、その当時、エレクトロニクスの国際的なサプライチェーンでは、年間で1690億米ドル分の偽造チップが流通していたという。米国では、米軍が使用する軍用機器から偽造電子部品が見つかったことで、事態の深刻さが明らかになり、政府が規制に乗り出している。2014年5月には、米国防総省が、偽造品の使用を防止すべく電子部品の調達規則を発表した(参考)。
偽造品の問題は、エレクトロニクス業界に限ったことではない。医薬品業界では、2010年の時点で、偽造医薬品の年間売上高が750億米ドルに上っていた(参考:世界保健機構(WHO))。食品や化粧品、自動車部品などの業界でも偽造品の問題が表面化している。
そうした偽造品を判別する技術の開発に取り組んでいるのが、米国のTruTag Technologiesだ。2011年に設立された新興企業で、米国ハワイ州に本拠地を置き、カリフォルニア州のシリコンバレー(エメリービル)とテキサス州にオフィスを構えている。
TruTag Technologiesが開発した、偽造品を識別する技術「TruTag」の要となっているのは、“粉”だ。高純度のシリカ(ケイ素)を主成分とする、直径20〜50μmの非常に細かい粒子である。このシリカ1つ1つの粒子の中に、直径がナノメートルオーダーの穴(以下、ナノポア=nano pore)を多数作り込むと、その粒子に光を当てた時に、特定のパターンの反射光が得られるという。反射光のパターンはナノポアの構造によって異なる。そのため、反射光のパターンと何かしらのデータをあらかじめひも付けておけば、それをICや医薬品の識別に応用できると、TruTag Technologiesは考えているのである。
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