シリカの粉は、コーティング剤などに混ぜて、医薬品やICのパッケージに塗布するといった方法で使うことができるという。
例えば、ある構造で作り込んだナノポアを持つシリカがあるとする。そのシリカを混ぜたコーティング剤を錠剤に塗っておく。さらに、その錠剤の名称や製造・販売元などのデータをクラウドに保存し、反射光パターンとひも付けておく。すると、錠剤に光を当てて得られた反射光パターンから、一連のデータを引き出すことができることになる。反対に、ひも付けられているはずのデータが出てこなければ、“偽造品”と判定できるのだ。
TruTagは、TruTag Technologiesの共同創設者兼チェアマンであるHank C.K. Wuh氏らが、偽造医薬品向けに開発した技術だ。医学博士でもあるWuh氏は、市場に出回る偽造医薬品を除外すべく、“本物”を正確に識別できる技術の開発に取り組んできた。
同氏によれば、シリカを選んだ理由は4つあるという。まず、融点が約1600℃と非常に高いこと。融点が高ければ、車載部品などにも使える。次に、微細な粒子であること。安価に量産できること。そして食べても大丈夫なほど安全性が高いことである。「そもそも粒子が微細すぎて目に見えないため、タグのように“偽造”することができない。初めは医薬品向けの技術として開発してきたが、現在は、エレクトロニクス業界や自動車業界もターゲットとしている」(Wuh氏)。
Wuh氏は、「TruTagは、錠剤やICなどに1つ1つ“DNA”を与えるような技術だ。あらゆるモノに“DNA”を与えることで、それらはトレーサブル(製造元などをたどれること)になる。将来的には、スマートフォンに内蔵されたライトを当てると、そのモノにひも付けられた情報がスマートフォンの画面に表示されるようなシステムを作りたい」と語った。なお、TruTagは、2014年1月に開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、先進的な技術開発を手掛けた企業に贈られる「テクノロジーパイオニア賞」を受賞している。
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