情報通信研究機構(NICT)は、クレアリンクテクノロジーの協力を得て、10Gbps高速インターネット環境でも、遅延やパケットロスに強いデータ通信プロトコルの開発に成功した。10Gbpsインターネット環境で、大容量ファイル転送や高速ウェブ閲覧、低ノイズの4k/8k映像伝送などを可能とする。
情報通信研究機構(NICT)統合データシステム研究開発室は2015年11月、クレアリンクテクノロジーの協力を得て、10Gビット/秒(bps)の長距離広帯域伝送網(LFN)でも遅延やパケットロスに強いデータ通信プロトコル「HpFP(High-performance and Flexible Protocol)」の開発に成功したと発表した。HpFP試験実装版(α版)の公開も始めた。
開発したトランスポート層の通信プロトコル「HpFP」は、NICTが2011年4月より運用を始めた次世代通信網テストベッド環境「JGN-X」でのデータ通信実験の成果を基に、クレアリンクが開発したTCP高速化パケット伝送制御技術「xTCP」を用いて、独自アルゴリズム設計により実装した。具体的には、再送制御や輻輳制御、送出制御、フロー制御などが一般的なTCPとは異なるアルゴリズムで設計されている。
例えば、HpFPは受信サーバ側で受信パケットのパケットロスや遅延といった通信パラメータを計測して、ネットワークの状況を分析/予測する。通信パラメータは、確認応答(ACK)機能を用いて送信側に戻される。この情報に基づき、送信サーバ側は最適なサイズ及びタイミングでパケット送出を行う仕組みである。
10Gbpsネットワーク上で様々な遅延やパケットロスを与える実験を行い、その結果を一般的なTCPプロトコルと比較した。遅延やパケットロスがない環境では、TCPもHpFPもほぼ利用できる最大通信速度を達成している。ところが、遅延やパケットロスが大きくなると、TCPは通信速度が大きく低下した。これに対し、HpFPは通信速度にほとんど変化がないことが分かった。例えば、パケットロスが0.1%で遅延10msの場合、HpFPとTCPの速度比は約145倍となった。なお、HpFPはパケットロスが1%で遅延が100msの場合においても、ほぼ同じ通信速度が得られたという。
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