5G PPPに割り当てられている7億ユーロという数字を見れば、欧州が5Gを重要視しているのが分かる。欧州は3G(第3世代移動通信)の実用化を主導したが、4Gでは米国がけん引役となった。そのため、5Gでは欧州が主導権を取り戻したいのだとみている専門家もいる。5Gについては、欧州だけでなく、米国、日本、韓国も積極的だ。最近は中国も力を入れ始めている。Mohr氏に、欧州における5Gの課題について尋ねると、技術的な問題よりも、「5Gに関わる多数の企業・団体のコンセンサス(意見の一致)を得ること」の方に難しさがあるという。
「5Gでは、採用する技術などについて、多くの企業の間で衝突が起きている。高速通信や低遅延、高い信頼性、高いエネルギー効率といったように、求めているものや目指しているものは各社同じなのだが、それを実現するための技術については、“自社のものを採用してほしい”という要求が強く、コンセンサスを得ることがなかなか難しい」と、Mohr氏は説明する。
通信は、周波数帯の割り当てなど、各国が独自にインフラを構築していることが多い。そのため「通信の世界では政治的な問題が絡む」とMohr氏が言うように、通信関連では足並みをそろえることが難しい。Mohr氏は、5G PPPが担う最も重要な役割も、「コンセンサスを得ること」だと強調した。5G PPPでは、プロジェクトを公募し、5G PPPではない第三の機関が選別させることで、公平性が生まれるように考慮しているという。
Mohr氏によれば、欧州では道路や工場で5Gを利用することに関心が集まっているという。同氏は、5Gの最も大きな特徴となるのは低遅延だとみている。低遅延によって、ほぼリアルタイムでV2X(Vehicle to everything)通信が行えるようになれば「交通渋滞の緩和に役立つ」(同氏)。工場では、障害管理などに使われるのではないか、とMohr氏は述べた。
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