中国Tsinghua UniGroup(清華紫光集団)とドイツInfineon Technologies(インフィニオンテクノロジーズ)が、ルネサス エレクトロニクスへの投資を検討しているとのうわさが、ここ最近広まっている。こうしたうわさが流れているのには、幾つか理由がある。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)はかつて、日本で最も問題を抱えた半導体企業だった。だが同社は今、中国のTsinghua UniGroup(清華紫光集団:以下、Tsinghua)やドイツのInfineon Technologies(以下、Infineon)など日本国外の複数の半導体メーカーにとって魅力的な投資対象となっている。
Tsinghuaがメモリチップ事業に野心を燃やしていることはよく知られている。同社は、ロジック事業への足掛かりとして、ルネサスへの投資を検討していると報じられている。
Infineonにとって、インフォテインメントやヘッドユニット、デジタルコックピット技術などのInfineonが後れを取っている車載エレクトロニクス分野に強いルネサスは、理想的な投資対象である。ルネサスが日本と欧州の自動車メーカーの間で強い立場を誇ることも、重要な要素だ。例えば、ルネサスは日本の半導体ベンダーで唯一のAudiの戦略的研究開発パートナーである。STMicroelectronicsとInfineonも、Audiの半導体パートナーだ。
もちろん、ルネサスへの投資を検討しているどの企業も、まだ正式なコメントは発表していない。しかし、日本の業界筋では、ここ数週間このうわさが広まっている。
うわさが広がっている背景には、幾つかの理由がある。
その1つは、ルネサスの経営が好調に転じていることだ。同社は2015年5月に、2015年3月期(2014年度)の業績を発表し、最終黒字824億円を計上したと発表した*)。
*)関連記事:ルネサス、発足以来初の最終黒字824億円を計上
2つ目は、政府が支援する企業再生ファンドである産業革新機構が、ルネサスに対する投資を縮小する計画であることだ。産業革新機構が保有するルネサス株の売却禁止(ロックアップ)の期間は、2015年9月で終了している。
日本経済新聞(日経新聞)は2015年11月21日、「産業革新機構は現在、ルネサスの株の70%近くを保有しているが、それを50%以下に引き下げたい考えである」と報じた(参考記事)。
3つ目は、ルネサスは今後も車載半導体市場で強い存在感を維持し、特に日本の自動車メーカーと密接な関係性を持ち続けると考えられることだ。ルネサスの自動車事業の売り上げは、2015年第1四半期に増加に転じ、前年比、前期比ともに増加している。
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