日本のメディアを含む日本の業界筋の多くは、「ルネサスを外国企業の手にゆだねるべきではない」というナショナリズム的な見解を持っている。彼らは、「ルネサスは、日本経済の再生の原動力として重要な自動車業界の鍵となる存在だ」と主張する。その一方で、「産業革新機構の目的は、世界の他のプライベートファンドと違わないはずだ。その目的は資金を増やすことで、産業革新機構は最も投資を回収できる方法を選択すべきだ」という見解もある。
ルネサスは2013年、産業革新機構と顧客企業8社から合計約1500億円の出資を受けている*)。2011年の東日本大震災による工場の操業停止など、ルネサスは大打撃を被った。その後もなかなか回復できずにいた同社を救済すべく、トヨタ自動車や日産自動車、パナソニック、キヤノン、ニコンなどそうそうたるメンバーがルネサスに出資したのである。
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日経新聞は、産業革新機構が売却したがっているルネサスの株式を購入する候補として、トヨタ自動車とパナソニックを挙げている。また、産業革新機構は、キヤノンやデンソーにも株式の売却を持ちかけているとも報じられている。
車載ICの供給がひっ迫しているわけではない今、ルネサスに投資したメーカーが、さらなる出資を行うとは思えない。だが、車載分野での勢力拡大に非常に積極的なTsinghuaやInfineonにとっては、ルネサスに投資したい理由は十分にあるだろう。Infineonの目には、車載用ICの他にも、ルネサスが持つ産業機器制御やIoT(モノのインターネット)向けのプラットフォームが魅力的に映るかもしれない。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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