ここで核となるのが、ルネサスの産業機器/産業ネットワーク向けプラットフォーム「R-IN(Renesas’s platform for INdustry)」だ。R-INのIP(Intellectual Property)群である「R-INエンジン」には、CPUの他、リアルタイムOS(RTOS)がハードウェアとして搭載されていて、高速なリアルタイム処理性能を実現している。
今回、ルネサスは、人工知能技術を手掛けるクロスコンパス・インテリジェンスと共同で、R-INに人工知能を搭載した。これをエッジデバイスに組み込むことで、エッジデバイスが高度なデータ解析と高速なデータ処理および通信機能を持てることになる。人工知能が大量のデータから不具合などの異常を判断し、R-INでマスターデバイスにそのデータを送信すれば、異常検知や予兆保全を、より高精度に、より効率的に行えるとする。
ルネサスは2015年4月から、R-INと人工知能を搭載したエッジデバイスを使った異常検知の実証実験を、同社の那珂工場(茨城県ひたちなか市)で行っている。
那珂工場では従来、装置にセンサーを取り付け、センサーデータをPLCを介して監視システムに送信していた。安全性を高めるために閾値を厳しく設定しているので、異常アラームが何度も鳴ることがあり、その度にベテランの技術者がクリーンルームに入ってアナログデータ(ペンレコーダー)の記録紙を見に行っていたという。工場には多数の装置があり、製造する製品もさまざまなので、閾値を設定するだけでも大変な労力がかかっていた。さらに、スパイクノイズなどの突発的な異常は検知が難しいという問題もあった。
実証実験では、プラズマエッチング装置のプラズマ発光の状態をモニタリングした。人工知能に正常な波形を学習させ、それとは異なる変動を示した場合に「異常」と判定できるようにした。人工知能の導入により、「異常」の検知率は従来比で6倍に向上したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.