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「半導体メーカーとの連携不可欠」――TDKQualcommのIP利用でもメリットが(1/2 ページ)

TDKは、Qualcommとの合弁会社「RF360 Holdings Singapore(以下、RF360 Holdings)」を設立した背景について説明会を開催。同社社長の上釜健宏氏は、「半導体メーカーとの連携が不可欠」と語った。ただ、やはり合弁会社設立に対する疑問の声や懸念事項もあるようだ。

» 2016年01月13日 21時22分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 TDKは2016年1月13日に、Qualcomm(クアルコム)との合弁会社「RF360 Holdings Singapore(以下、RF360 Holdings)」をシンガポール法人として設立することを発表した*)。本社機能はドイツ・ミュンヘンに置く。米国、欧州、アジアに研究開発、製造または販売拠点を置いて、グローバルに事業を展開する。TDKは同日夜に電話会議を開催し、合弁会社設立の背景などについて説明した。

*)関連記事:TDKとクアルコム、合弁会社を設立

RF360 Holdings RF360 Holdings設立のイメージ(クリックで拡大) 出典:TDK

半導体メーカーとの連携不可欠

 TDKの社長を務める上釜健宏氏は、合弁会社設立の背景について「スマートフォンでは、2G(第2世代移動通信)〜4G(第4世代移動通信)対応の通信ICの他、GPSやWi-Fi通信IC、Bluetooth通信ICなども搭載されることが一般的になっている。それに伴い、RFフロントエンドはかつてないほど、小型化や高性能化、高集積化が求められるようになってきた。さらに、パワーアンプ(PA)やスイッチ、デュプレクサを統合したPAMiD*)のニーズも拡大してくると考えられ、そうなるとPAとフィルタのすり合わせが重要になる。これらのニーズに応じた製品をタイムリーに市場に提供するには、半導体メーカーとの連携が不可欠だと判断した」と語った。

*)PAMiD:PA Module with integrated Duplexer

 上釜氏によれば、Qualcomm以外との半導体メーカーにも合弁会社設立のアプローチはかけていたという。だが、「技術力や製品ポートフォリオなどを総合的に見て、やはりQualcommとの協業がベストだと判断した」(同氏)と話した。

 ただし、当然、Qualcommと合弁会社を設立することに対しては、疑問の声やリスクもあるという。

 RF360 Holdingsには、SAW(表面弾性波)フィルタやデュプレクサなどの製品がTDKから移管される。「これらはやっと利益が出始めた製品で、その利益も増えている。わざわざ合弁会社を作って移管しなくともTDKだけで利益を出し続けられるのではないか、といった声もあった」(上釜氏)。だが、これらの製品で利益が出ているのは、Qualcommのリファレンス設計に採用されていることも大きいという。「そもそも、この時点でQualcommとのシナジーは既にある」と、同氏は続けた。

 MediaTekなど、Qualcommの競合メーカーとの関係の持続も、デメリットになり得る要素の1つだ。これについて上釜氏は「すぐに関係が悪化するということはないと考えている」と述べ、顧客に直接足を運んで説明するということも付け加えた。ただし、一部の顧客からは「RF360 Holdingsではなく、引き続きTDKから購入したい」という声もあるようで、そうした顧客に対しては、TDKがRF360 Holdingsからその製品をいったん購入して、顧客に販売するというルートも考えているようだ。

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