セッション22では、最先端のバイオエレクトロニクス向け要素技術の発表が相次ぐ。脊髄損傷者の運動機能回復を支援する人体埋め込みモジュールや、64チャンネルの人工蝸牛シリコンチップが登場する。セッション23では、シリコンフォトニクス技術で作製した56Gビット/秒(Gbps)の高速光リンク送信器に注目したい。
前回に続き、ISSCC 2016の技術講演プレビューをお届けする。技術講演の最終日である、2016年2月3日(水曜日)の午前に発表予定の講演論文から、未紹介のセッション(セッション22)と、3日(水曜日)午後に発表予定のセッションのみどころをご紹介しよう。
セッション22のメインテーマは「テクノロジディレクション」、サブテーマは「ヒューマン・マシン・インタフェース用のシステムと計測」である。最先端のバイオエレクトロニクスを支える要素技術が続出する。ここでは人体に埋め込んだり、貼り付けたりして神経に刺激を与えたり、生体信号をモニターしたりするチップの開発成果が登場する。
Stanford Universityは、脳神経と電気機械のインタフェース・チップに対する要求仕様を議論する(講演番号22.1、招待講演)。生体に埋め込んで神経の信号を高密度・高効率で捕捉し、処理し、伝送するシステムを展望する。
University of Californiaは、脊髄損傷者の運動機能回復を支援する人体埋め込みモジュールを発表する(講演番号22.2)。無線通信機能を備えており、176チャンネルの筋電位刺激チャンネルを有する。モジュールの大きさは0.5cm3、重さは0.7gである。
KAISTは、動脈血酸素飽和濃度(SpO2)のパルスオキシメーター測定やExG(心電計や脳波計)測定などの機能を備えたステッカータイプのSoC(System on a Chip)を報告する(講演番号22.3)。有機LED(OLED)とフォトダイオード(PD)、バッテリーを内蔵しており、全体の重さは2g。SoCの消費電力は141μWと低い。
imecとKU Leuven、North Carolina State Universityの共同研究グループは、圧縮サンプリングによる光電脈波計測(PPG)読み取りチップを発表する(講演番号22.4)。脈拍とそのゆらぎを出力する。消費電力は172μWと低い。
ETH Zurich/University of Zurichは、64チャンネル×ステレオの人工蝸牛シリコンチップを発表する(講演番号22.5)。イベント駆動型のステレオ音声センシング用である。電源電圧は0.5V、消費電力は55μWと低い。
imecとKU Leuvenの共同研究チームは、966本もの神経プローブ電極を内蔵したニューラルチップを開発した(講演番号22.7)。再構成可能な384個のチャンネルを搭載する。製造技術は0.13μmのCMOS。
ETH Zurichは、5万9760個と多くの電極を搭載する多機能微小電極アレイを試作した(講演番号22.8)。2048個の電気生理チャンネルを内蔵し、インピーダンスと神経伝達物質の測定ユニットを備える。
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