同技術を使って製造した炭素繊維の性能は、弾性率が240GPa、強度が3.5GPa(伸度1.5%)になったという。これは、国内メーカーが提供する炭素繊維の性能に比べれば低い。だが、影山氏は「工業製品に十分匹敵する性能で、航空機にも使用できる」と述べている。
炭素繊維の開発プロジェクトは欧米でも進められているが、低コスト化を最優先にしているので、目標とする性能は、弾性率200GPa以下、強度3GPa以下と、低めに設定されている。NEDOは、今回のプロジェクトの数値目標(2015年度)として、弾性率235GPa以上、伸度1.5%以上と設定していた。海外勢に比べて高い目標設定だったが、今回「溶媒可溶性耐炎ポリマー」から製造した炭素繊維は、それを達成したことになる。
新しい製造技術を確立したことで、炭素繊維の量産加速に大きく近づいた。今後は、性能をより高めるとともに、製造技術の実用化も進めていく。現行方式とは異なる点として、マイクロ波加熱装置や、プラズマ表面処理装置を導入しなければならないが、メーカーの製造ラインへの投資がどの程度必要になるかは、現時点では不明だという。
影山氏は、炭素繊維の性能や生産性を向上する鍵は、前駆体が握っているという。同氏は、「溶媒可溶性耐炎ポリマー」を作ることは極めて難しく、“まねできない技術”として日本は今後も優位性を保てるのではないか、と語った。
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