今回はセッション24〜26を紹介する。「ワイヤレス通信」がテーマとなっているセッション24では、IoE(Internet of Everything)向けの低消費電力無線チップの発表が相次ぐ。ソニーとソニーLSIデザインが開発した、消費電力が1.5mW〜2.3mWと低いGNSS(全地球航法衛星システム)受信器などが発表される。
前回に続き、ISSCC 2016の技術講演プレビューをお届けする。技術講演の最終日である、2016年2月3日(水曜日)の午後に発表予定のセッションから、注目の講演をご紹介しよう。今回は、セッション24からセッション26の主な講演をご説明する。
セッション24のメインテーマは「テクノロジディレクション」、サブテーマは「超高効率コンピューティング」である。このセッションはハーフセッションで、全部で講演件数が3件と少ない。
講演件数は少ないものの、水準の高い内容の発表が相次ぐ。まずMassachusetts Institute of Technology(MIT)が、視覚障がい者用のナビゲーションシステムを想定した3次元画像処理チップを発表する(講演暗号24.1)。30フレーム/秒の動画像を8mWと低い消費電力で処理する。電源電圧は0.6Vと低い。
またIsoclineとUniversity of Michiganの共同研究グループは、自己校正機能を備えたGPSアクセラレータチップを報告する(講演番号24.3)。消費電力当たりの演算性能は36.8 2b-TOPS/Wと高い。製造技術は65nmのLP CMOS。
セッション24の後は、同じ会議室でセッション25が続けて開催される。セッション25のメインテーマは「RF」、サブテーマは「ミリ波とTHz(テラヘルツ)のセンシング」である。ハーフセッションながら講演の件数は5件で、セッション24に比べると多い。
University of WuppertalとIHPの共同研究チームは、電磁波の周波数が0.55THzと高い近接場センサーを開発した(講演番号25.1)。横方向の分解能は8μmと極めて高い。信号対雑音比は20dBである。製造技術は0.13μmのSiGe(シリコン・ゲルマニウム) Bi-CMOS(バイポーラCMOS)。
University of Texasは、有機高分子などの回転スペクトル測定に向けたCMOSミリ波受信器を報告する(講演番号25.2)。210GHz〜305GHzと広い帯域でミリ波を受信したときの雑音指数(NF)は13.9dB〜19dBである。製造技術は65nmのCMOS。
Princeton Universityは、周波数シンセサイザを省いたサブテラヘルツの分光測定チップを開発した(講演番号25.3)。電磁界散乱を利用して周波数を推定する。測定帯域は40GHz〜330GHz、分光測定の推定分解能は10MHzである。
Cornell UniversityとMIT、Qualcomm、STMicroelectronicsの共同研究グループは、周波数が320GHzのコヒーレント(時間相関)・イメージセンサーを発表する(講演番号25.5)。高出力送信器、ヘテロダイン検版器(8セルのサブハーモニックミキサ)などを搭載している。感度は70.1pWと高い。製造技術は0.13μmのSiGe Bi-CMOS。
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