具体的には、これまで近接ビームが接近、重ならないように処理していた対角化プリコーディングではなく、新技術では、多重対角化プリコーディングと呼ぶ、ビーム間が重なるような干渉を起こす形状を許し、理想的な高利得のビームを形成する処理を実施。その後、ビーム間が重なり干渉を起こす部分を打ち消す「非線形演算」処理を施し、複雑なビーム形状ながら互いに干渉を起こさないビームを出力する。
三菱電機では、開発したマルチビーム多重技術を適用したAPAAの試作器(44GHz帯域対応/1ビーム分/素子数8×6個)を作製。同試作器の実際の出力を基に、シミュレーションを行った結果、端末間の距離が2cm程度でも、通信速度が大きく低下せず、5Gの要件である20Gbpsを上回る通信速度を維持できたという。
三菱電機情報技術総合研究所無線通信技術部長の岡村敦氏は、「社内では、キスするような距離(でも通信速度が低下しない技術)を目標に開発し、実現できた。5Gで採用される無線周波数帯は決まっていないが、(試作器が対応した)44GHzまでの周波数であれば、開発した技術が有効であるということだ。今後、壁掛けに対応するような薄型のアンテナシステムを構築し、2018年度にシステム実証を実施し、2020年以降の実用化を目指す」と語った。
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