東京大学の染谷隆夫氏らは、「nano tech 2016 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で、体に直接貼り付けることが可能なフレキシブル体温計などの開発品をデモ展示した。柔らかい有機デバイスをバイオ医療に応用していく。
東京大学 大学院工学系研究科の教授を務める染谷隆夫氏らは、「nano tech 2016 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2016年1月27〜29日、東京ビッグサイト)において、体に直接貼り付けることが可能なフレキシブル体温計などの開発品をデモ展示した。
開発した技術は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(ERATO型研究)として取り組んでいる「生体調和エレクトロニクス」プロジェクトにおける研究成果の1部である。同プロジェクトでは、有機デバイスをバイオ医療に応用するための技術開発に取り組んでいる。
例えば、生体により適合する有機材料を用いた特殊インク(バイオインク)を開発し、それを応用した生体プローブを実現していく。さらに、生体プローブを作製するためのパターン形成技術(バイオ印刷)や、生体から収集した信号を可視化するための技術(生体調和イメージング)などを5つのグループが分担し、それぞれ研究/開発を行っている。最終的には生体に埋め込むことが可能なバイオ有機デバイスの開発を目指している。
展示ブースでは、フィルム基板上に作成したフレキシブル体温計の試作品をデモ展示した。試作したポリマーPTCは、櫛形電極の上に材料を印刷する。一般的なポリマーPTCは高い温度の検知に用いられるため、ポリエステル樹脂などの材料を用いることが多い。今回は37度程度の体温測定を目的としているため、アクリル樹脂を採用した。
「センサー素子のサイズは8×6mmと小さい。印刷プロセスを使って作製するため、センサー素子を144個(12×12)搭載したセンサーモジュールなども、一括で形成することができる」(説明員)と話す。
絆創膏のように体に直接貼り付けて、体温データを収集することができるため、活動中の測定も可能である。医療関係者からは、「呼吸を繰り返し行っている時の体温測定や、熱帯地と寒冷地に住む人の代謝能力を比較するための体温測定などに利用してみたい」といった声があるという。センサー部と近距離無線通信モジュールを組み合わせれば、ワイヤレスでデータ通信を行うこともできる。
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