これまで、3D NANDフラッシュではチャージトラップ方式が採用されてきた。だが、同方式はプレーナ型NANDフラッシュに適用されるフローティングゲート方式と比べると高コストである。
Handy氏は、「チャージトラップ方式で、プレーナ型NANDフラッシュとコスト競争力のある3D NANDフラッシュを製造できるとは考えにくい。Micronが開発したフローティングゲート方式の3D NANDフラッシュは、こうした状況を好転させることができると期待されるが、結論を出すには時期尚早だ」と述べている。
Samsungは、フラッシュメモリ市場で34.1%のシェアを誇り、同市場をリードしている。Micronは東芝、SanDiskに次ぐ第4位で、シェアは14.6%である。
Handy氏は、「Samsungの3D NANDフラッシュ『V-NAND』は、売り上げを順調に伸ばしている。量産によって、同技術が抱えるコスト面での課題を克服したい考えだ。V-NANDの売り上げが堅調であることは、技術リーダーとしての同社のイメージにも役立っている。だが、技術リーダーであることを真に証明するには、多額のコストを投じる必要があるだろう」と指摘している。
一方のSamsungも、ISSCC 2016で、3D NANDフラッシュについて説明している。
メモリセルを垂直方向に48層重ねた第3世代の3D NANDチップは、同社が2015年に発表した32層のレイヤーを持つ旧品種と比べて、密度が2倍高いという。同社の経営幹部は以前に、「いずれは、100層以上に増やすことが可能だ」と語っている。
Samsungの論文の著者であるDongku Kang氏は、「成功の鍵は、面密度にある」と述べ、Appleの音楽プレーヤー「iPod」が、より多くのメモリを搭載したことによって、いかに競合他社製品を打ち負かすことができたかを説明した。
このようなNANDフラッシュを製造する上で課題の1つとなっているのが、各層を通るように縦長の穴をエッチングすることによって、層同士を接続し、その穴にインターコネクトを実装するという点だ。Kang氏は、「比較的大きなチャンネルホールは簡単に作ることができるが、ワード線抵抗が低下するという問題が生じる」と述べる。
SanDiskの創設者であり、フラッシュメモリ分野の先駆者でもあるEli Harari氏は、「今後、Samsungのチャージトラップ方式と、Micron Technologyのフローティングゲート方式のどちらの技術が普及していくのか、今のところはまだ分からない。しかし、フローティングゲートは非常に難しい技術であることから、私としてはチャージトラップの方が有力だと確信している」と述べている。同氏は、ISSCC 2016の講演に参加し、最前列に座って注意深く耳を傾けていた。
一方でTanaka氏は、「フローティングゲート方式は、プレーナ型NANDフラッシュにおいて十分に確立された技術であり、MicronとSanDiskの両社も数多くの関連特許を保有している」と指摘する。同氏は、かつて東芝でNANDフラッシュの設計を担当した経歴を持つ。
Harari氏は、既にSanDiskを退職していることから、「そのような点に関しては、私の知識が追い付いていないかもしれない」と述べた。それでも同氏は、現在も業界において精力的な活動を続けているという。
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