今回は、私が連載当初から掲げてきたテーゼ「人類は、ダイエットに失敗するようにできている」を、目に見える形(=シミュレーション)で示します。前半では、このシミュレーションに使うパラメータを作るべく、ダイエットの苦痛を“定量化”します。なぜ、“苦痛”がパラメータなのか? ――それは、苦痛を伴わないダイエットなど、ダイエットとはいえないからです。数字が、それをちゃんと語ってくれるのです。
「世界を『数字』で回してみよう」現在のテーマは「ダイエット」。人類の“永遠のテーマ”ともいえるダイエットを、冷静に数字で読み解きます。⇒連載バックナンバーはこちらから
これまで1年近く、ダイエットの連載を続けてきました。
しかし、私のこれまでの仮説検証や数値化を嘲笑うかのように、今なお、根拠なきダイエット方法が「発明」され、「流布」され、「書籍化」され、さらにダイエッターの「無駄な努力」が強いられ、そして「ダイエットの失敗の無限ループ」が続けられています。
娘たちは、「パパのコラムなんて、パパが思っている程には影響力はないんだから」と、私を慰めて(慰めているのか?)くれているのですが、私もほとんどの週末と睡眠時間を削って、命懸けの計算と執筆をしているのです。
ですから、ダイエットの世界に一石を投じたいとは思っているのです。
私が、150日程度で11.5kgの減量ができたのは、中学校で教えてくれる「エネルギー保存法則」を信じていただけです。そして、私が知り得る限りこれ以外の理屈で痩せる方法はありません。
ダイエットの最終定理は、
―― 痩せたければ、食うな
この一言に尽きます。
ですが、私たちは、それができない。
「人類は、ダイエットに失敗するようにできている」からです。
これまで私は、数多くの「ダイエットに失敗する理由」を検討し、仮説を立てて、数値で検証してきましたが、それらの検討はバラバラで、場当たり的で、全体としてのイメージを把握しにくいのかもしれない、と考えました。
ならば、実際に「ダイエットが失敗していく工程の全体を『見える化』してやればいい」――。そう考えた私は、この年末年始の休みに、実家のキッチンにPCとディスプレイを持ち込みました。
そして、父親の好物であるカサゴ(魚)の煮付けを作ったり、鯛を3枚におろして刺身にしたりしながら、ダイエット用の仮想人格プログラム”バーチャル江端”のコーディングを行っていました。
なにしろ、私は、現実世界には1人しかいません。そこで、コンピュータの中に、さまざまな考え方をする、複数の江端を作って、そいつらに、ダイエットをやらせるのがてっとり早いと考えたのです。
それに、せっかく減らした11.5kgの体重をまた元に戻して、もう一度パターンを替えてダイエットを再開するなど ―― 想像もできません(実際にそういう恐ろしいことを提案した後輩もいましたが)。
今回の私のダイエットは、この連載のためのデータ収集が目的でしたが、そのダイエットの工程は、他のダイエッターと同様に、「苦痛を伴うもの」だったのです。
ですから、誰がなんと言おうと、私のダイエットは、これが人生ファイナルです。
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