Jacobfeuerborn氏は、「人々がコネクテッドサービスを利用したいと思うのは、自宅にいる時や飛行機の中、車を運転している時などさまざまだろう。ただし、プライバシーやセキュリティが高度に保護されていればの話だ」と指摘する。
Jacobfeuerborn氏は5Gの未来について、Choi氏が提示するような、ロボットやVR、ARなどのユートピアの実現とは異なる見方を示す。「最初に着手すべきは、技術ソリューションではない。まずは全てを簡素化し、消費者が何を必要としているのかを見極めることから始めるべきだ」と主張する。
トルコの大手携帯電話事業者であるTurkcellでCEOを務めるIlker Kuruoz氏は、パネルディスカッションの中で、「ここでいう簡素化とは、家の中の全てのデバイスがスマートフォンゲートウェイに接続され、すべてがつながっていても使い勝手が良く、消費者が各種デバイスによって面倒な思いをさせられることがないということだ」と述べる。コネクテッドホームは本当に実現可能なのだろうか。
しかし、単純化を実現するには、さまざまな課題が提起される。QualcommのGrob氏が指摘したように、5G通信のさらなる高性能化を実現するには、無線LANやLTE、アンライセンス周波数帯などを一元化する必要がある。しかしそれは、現在厳しい競争が繰り広げられている状況の中では、現実とは懸け離れた理想にすぎないのではないだろうか。欧州議会のメンバーであるPilar del Castillo氏は、パネルディスカッションの中で、「EU(欧州連合)は、周波数帯管理をめぐる政策に関して、全く一致団結できていない」と指摘する。
「欧州28カ国が断片化されている現状を打破しなければならない。われわれにとって、活用すべきはずのスケーラビリティそのものが、問題となっている」(del Castillo氏)。
最終的に、パネリストたちが明言しなくとも伝わってきたのは、「5Gは、必要不可欠な技術であるものの、実際にはさまざまな問題に直面している」というメッセージだ。問題の1つとして確実に挙げられるのが、政治である。さらに、5Gを導入することになる通信事業者たちの間で、5Gの潜在能力に関する見通しが著しく異なっているという問題もある。
中でも、特にGrob氏が討論の最後に繰り返し主張していたのが、コストの問題だ。同氏は、「消費者のために、データ伝送速度を1000倍に高めることはできても、請求金額を1000倍にすることはできない」と指摘している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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