第5世代移動通信(5G)の実現の鍵を握るのは、結局のところ、コスト次第のようだ――。2016年2月22日、Mobile World Congress2016でパネルディスカッションが行われ、専門家が5Gについて議論を交わした。
「Mobile World Congress2016」(2016年2月22〜25日、スペイン バルセロナ/以下、MWC 2016)において2月22日、基調講演のパネルディスカッションが行われ、第5世代移動通信(5G)によっていかに消費者に価値を生み出すかという課題をめぐり、議論が繰り広げられた。大手通信事業者/メーカーから集まったパネリストたちは、新たに高速5Gサービスを実現する上で、消費者が支払い続けることが可能な料金を実現するには、どのようにコストを削減すべきかを議論した。最終的には、5Gの当初の目標が少しずつ変化する結果となっている。
QualcommのCTO(最高技術責任者)を務めるMatt Grob氏は、「あらゆる種類のサービスにおいて5G導入を実現するためには、結局のところコストが問題となる」と指摘する。
SK TelecomのCTOであるAlex Jinsung Choi氏は、プレゼンテーションの中で、「5Gが、データ伝送速度の高速化と低レイテンシ(伝送遅延)を実現することにより、進展していくと期待されるサービスとして、AR(拡張現実)が挙げられる。現在のところ、ARの主なユースケースはゲームだが、今後は例えば、それぞれ別の場所にいる人々がお互いの距離を感じることなく共同作業できるようサポートすることなども可能になるだろう」と述べる。
また今後5年の間に、5Gによって確実な実現できると期待される分野としては、360度のVR(仮想現実)ライブストリーミングサービスや、遠隔制御ロボット、自動運転車の他、これまで普及が遅れに遅れてきたコネクテッドホームなども挙げられる。5G標準規格の技術的詳細に関しては、2020年に策定される予定だ。Choi氏は、「将来的には、ストリーミングデータ伝送速度で20Gビット/秒(現在は約5Gビット/秒)以上を達成することにより、『仮想分離ネットワーク(virtualized isolated networks)』を実現できると期待している」と述べている。
Deutsche TelecomのCTOであるBruno Jacobfeuerborn氏は、5Gのコスト関連の課題の1つとして、「現在では、スマートフォンの普及により、誰もが常に接続された状態にある」を指摘する。これは、Boston Consulting GroupのJanice H. Reinold氏が以前に、「現代世界では、すべての人々が、接続されているか眠っているかのどちらかの状態にある」と語ったのを引用したものである。
Jacobfeuerborn氏は、「新しい世代のスマートフォンユーザーは、“デジタルライフ”を生きる“デジタルネイティブ”である」と説明する。Grob氏の言葉を借りれば、「長方形の小型デバイスを凝視し、眼球を使って仮想的な生活に参加している人々」となる。しかし、デジタルネイティブが常時接続の状態を維持するには、Deutsche Telecomなどのプロバイダーへの支払いを負担しなければならない。このため、より高い品質のサービスだけでなく、データ伝送速度のさらなる高速化や、低レイテンシなどが求められ、さらに支払金額も増加するとことになる。
Grob氏は、「さらなる性能向上とセキュリティの実現が不可欠だ」と指摘する。
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